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2012.10.16

須賀敦子著「コルシア書店の仲間たち」

軽いエッセイだろうと読み始めて、その誤りに気付いたのは、ページを半分近く捲り終えた頃だった。
エッセイにしては内容が濃過ぎて、読み進めるのが少し苦になった頃、これは短編小説だと判った。そう思ってしまえば不思議と気楽に読めるようになり、著者と書店をめぐる入り組んだ人間ドラマも、色鮮やかなタペストリーのように見渡せるようになった。
舞台は1960年代のミラノ。その地にはまだ日本人が珍しく、人々は戦争の傷痕を胸の奥に残していた。古き良き上流階級の残照と、共同体を夢見たインテリたちの理想が混在した時代。500ccの小さなフィアットが、石畳の路地を抜け出し、紺碧の地中海を見下ろす丘を駆け昇った時代でもあった。

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2012.10.14

丸谷才一の「横しぐれ」と「樹影譚」

丸谷才一の小説は面白い。読み始めると止まらなくなる。それは謎解きの要素がふんだんに織り込まれ、次の展開はどなるのだろう?という気になってしまうからだ。
丸谷作品は概ね読んでいる。その中でお薦めなのが二編の短編小説(と言っても少し長いので中編小説とも言える)、「横しぐれ」と「樹影譚」。どちらも甲乙点け難く、自分にとっての二大傑作だ。
「横しぐれ」は、主人公の父親が旅先で出逢った貧乏坊主は、種田山頭火だったのではないかという謎解きを進めていくうちに、父親の謎が解けていくという話。
「樹影譚」は、樹木の影に不思議な気分を抱く主人公が、なぜそんな気分になるのかという自らの謎を解こうとする話。
いずれの作品も、普段ぼんやりと抱いている不思議な気分を深く掘り下げていくと、自分の中に潜む思わぬ謎が解けるというプロットが共通しており、それを読んだ自分はこの二作品に強く惹き寄せられた。悩んだり迷ったりする答えは、自分の中にあるのではないかと思わずにはいられなくなる。

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