« August 2012 | Main | October 2012 »

2012.09.22

アラウとクレンペラーによる重厚なショパン

Arrauchopin
ショパンは二つのピアノ協奏曲を残しており、いずれも20歳のときに完成させている。どちらもロマン派を象徴するような美しい旋律に彩られた傑作ではあるのだが、それを録音した多くの演奏には不満を持っていた。今まで聴いてきた録音はいずれも物足りなかった。
例えば協奏曲1番の冒頭のオーケストラ部分は、疾風怒濤の重厚さをもって演奏されるべきなのに、多くの録音はピアノ独奏までの貧弱な前奏になっている。ピアノが演奏され出しても、オーケストラは単なる伴奏のように演奏、録音されているものが多い。
まるでそれらはBGMのように、耳障りは良いが主張がなかった。もっと重厚に個性を前面に出して演奏すれば、ブラームスのピアノ協奏曲に匹敵するとずっと思っていた。
これらの積年の不満を払拭する協奏曲1番に遂に出逢うことが出来た。
 独奏:クラウディオ・アラウ
 指揮:オットー・クレンペラー
 オーケストラ:ケルンWDR交響楽団
 録音日:1954年10月25日
クレンペラーが振れば自ずと重厚になり、それに共鳴してアラウのピアノも攻めている。第3楽章ではオーケストラとピアノが掛け合いが素晴らしく、それぞれの演奏者の意志が手に取るように伝わってくる。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2012.09.04

佐野眞一著「巨怪伝」

Kyokaiden
正力松太郎の評伝である。大作で読了に1ヶ月を要した。
読売新聞、日本テレビ、巨人軍、プロレス、原子力発電などなど、正力が係ったものには支配欲とカネが渦巻いていた。警察官僚時代の治安維持で会得した大衆心理操作術を駆使し、戦後の大衆社会を作った男と呼んでも過言ではない。正力に比べれば、ナベツネすら小市民に思える。
正力の先見性と企画力、実行力には舌を巻くし、不屈の精神には敬服する。また蓄財や豪奢な暮らしには無関心な点には好感が持てる。しかし余りにも傲慢で独善的であったため、本人が夢見た政界の頂上に立つような人徳はなかった。
本著にはいくつものサブ・ストーリーが織り込まれており、正力の陰で消えていった男達の哀歌が切なく胸に残る。沢村栄治の末路だけでも一つの物語として読む価値がある。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« August 2012 | Main | October 2012 »