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2012.03.27

加藤仁著「たった一人の再挑戦」

Tattahitorinosaichosen
副題「50代早期退職者の行動ファイル」
非常に素晴らしいルポルタージュだ。下手な短編小説集より遥かに奇妙な人生が描かれている。事実は小説よりも奇なりだ。
定年を待たずに会社を退職し、新たな道を歩んだ約40人の男達を丁寧に取材し、脚色や余計な教訓じみたコメントを加えずに書かれているのに好感が持てる。現実はハッピーエンドばかりではなく、むしろ道を誤ったような結末もある。
但し全ての事例に共通するのは、自分の判断で人生の選んだことだ。後悔を口にした者がいない。

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2012.03.18

永井荷風著「濹東綺譚」

濹東綺譚は、中年を過ぎ初老へ向かう男にとってファンタジーだ。
主人公は麻布に住む小説家。女中を雇い、金に不自由はない。気の向くままに、小説のアイデアを練りながら、昭和初頭の東京を徘徊する。これは荷風そのもの。
夕立ちの玉の井で、傘に飛び込んで来た娼婦お雪と知り合う。
「年は二十四五にはなっているだろう。なかなかいい容貌である。」
お雪は男の正体を知らずに、通ってくる男と親しい関係を持つ。何の遠慮もなく、お互いを縛り合うこともなく、気楽でありながら、どこかで頼りにしているような関係だ。
季節はめぐり、お雪の容色と才智に惹かれながらも、男はお雪と距離を置き、やがて逢わないと決める。
全く世の男性読者にとって都合の良い小説ではあるが、男と女の仲は理屈では解けないものであるからこそ、この小説も名品として呼ばれているのだろう。

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2012.03.13

紀尾井ホールでの木嶋真優

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3年前に絶賛した木嶋真優を、やっと目の前で聴くことができた。

木嶋は通好みの難曲をプログラムに揃えていた。
1曲目にイザイ編曲のロカテッリを選ぶこと自体、普通ではない。
2曲目のストラヴィンスキーのディヴェルティメントになると、エンジンも暖まり、聴く側もやっと耳が追い付いてくる。特に第4楽章のアダージョからコーダへの展開は圧巻だった。この単楽章だけで、一曲分のボリューム感があった。
休憩を挟んで、ベートーヴェンのクロイツェル。序奏は少し不安定な感じがしたが、第2楽章の変奏になると、軽やかさと深さのメリハリが効いて、グングン良くなってきた。木嶋はノリ始めると凄い。第3楽章ではパッションが炸裂していた。
プログラム最後のチャイコフスキーのワルツ・スケルツォからアンコールにかけては、エンジン全開状態でホール全体を鳴らしていた。

心地良い疲れに酔いながら紀尾井ホールを後にして、永田町駅までの静かな夜道を歩いていたら、ふと、アンネ・ゾフィーが以前「自分のスタイルは、エクストリームだ」と言っていたのを思い出した。

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2012.03.11

Mark Bramley "Lost in Tokyo"

非常に素晴らしいビデオなのでシェアします。必見です。
Mark Bramleyという写真家が、Canon EOS 5D Mark IIで撮影したそうです。

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2012.03.10

前田靖一著「鮮烈・ビスマルク革命」

Bismarck
大著読了。
そもそもオットー・フォン・ビスマルクの評伝において、日本語で読めるものは限られている。ドイツ語であれば多少はあるのだが、流石にそれを読む意欲も、語学力もない。
誰もが漠然と認識している通り、ビスマルクは聖人君子などではない。策略の限りを尽くす典型的なマキャベリストだ。とは言え、オーストリーやフランスに戦勝し、ドイツの統一を果たした手腕は、並大抵の知謀ではない。喧嘩好きで、傲慢でありながら、緻密な思考と柔軟な戦略を持っていた。特に外交では、敵を味方にし、味方を敵にすることを繰り返し、自国を常に有利なポジションに置いた。
その一方で、上司である国王や皇帝との確執に心を痛めていた。
本著の不満を言えば、参謀総長のモルトケの登場場面が少ない。いくらビスマルクが政治家として優れていても、モルトケの軍事力なしでは、近隣国に強気の姿勢を貫けなかったはずだ。

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