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2009.08.01

松本清張著「或る『小倉日記』伝」

Seichouこの短編小説松本清張は43歳にして芥川賞を獲り、プロの作家としての道を歩み出した。遅いデビューであった。しかしこの作品は昨今の芥川賞受賞作に比べれば、雲泥の差とも言えるほど格調高く、明治大正の文豪たちの余韻を残すものである。
主人公の田上耕作は言葉と左手、片足が不自由で、生涯収入のある仕事にはつけず、妻を娶る事も出来なかったが、学業は優れ、知的探究心も強かった。耕作はあることをきっかけに、散逸した森鷗外の「小倉日記」の空白を埋めるべく、当時の鷗外の足跡を訪ね歩き始める。
Ougaiこの謎を解いていく手法は、清張後年の推理小説を彷彿とさせ、それこそ鷗外の傑作「渋江抽斎」をも思い起こさせる。何よりも主人公田上耕作は、前半生を不遇に過ごした清張自身の投影であるかのようにも読み取れる。
夏目漱石と森鷗外の位置関係のように、昭和の文壇には司馬遼太郎と松本清張がいた。司馬遼太郎の大衆小説を司馬史観などと神格化する現代の風潮を知ったら、司馬自身苦笑するだろうし、清張はどれほど不愉快な顔をするだろうか。

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