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2008.04.21

田山花袋著「田舎教師」

田山花袋の長編小説「田舎教師」は、全編を通して淡白で力んだところがなく、田舎暮らしの寂しさを感じさせる。主人公も大人しく、自我を貫くことをしない。心に思う女もあるが、誰にも打ち明ける事をしない。文学への憧れもあるが、それに人生を賭けることもしない。
「田舎教師」を評価しない人たちに言わせれば、「主人公に積極的な行動がなく、ただ運命を受け入れているに過ぎない」という指摘がある。その指摘は全くその通りで、主人公は、何となく生活のために教師になり、世に出て行く友人たちを尻目に、田舎で漠然と歳月を重ね、最後は悲しい結末で終わる。
しかし、これこそに現実的な説得力があるのであり、読む者が自分の境遇を重ね合わせる魔力を持っているのではなかろうか。もし主人公が艱難困苦を乗り越え、痛快にも立身出世したのならば、誰もこの小説に魅力を感じないだろう。運命に身を任せることしかできない人間の弱さこそ、目を逸らす事のできない現実なのだ。
この我らが心弱き主人公も、流石に途中平凡な暮らしに魔が差し、女郎に惚れて金を注ぎ込むことをする。借金が嵩み、教師の体面から女郎屋通いが世間に知られることを恐れる。ところがその女郎が身請けされ姿を消すと、暮らしを立て直そうと思い直し、元の慎ましさを取り戻すのだ。その頃、師範学校に通う元教え子の女生徒が、主人公に淡い恋心を寄せる。ここで小説が終われば、幸せな三流青春小説で終わったのだが、花袋は筆を止めなかった。
日露戦争開戦の頃から、主人公は病魔に伏せるようになる。貧しい暮らしの中で、季節と共に衰弱は進み、日露戦勝に沸く田舎町の陰で、主人公は若い命を閉じる。花袋はせめてもの慰めのように、主人公を慕った元教え子が数年後にその田舎町の小学校教師になったことを書き加えている。そして最後に、舞台となった田舎町に鉄道が開通するところで小説は終わる。

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