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2008.04.27

諏訪内晶子の音量

昨晩諏訪内晶子の実演を聴いて、その音の大きさと力強さに驚いた。これだけの音量は、アンネ・ゾフィー級だ。バイオリンという楽器が、演奏端末となってホール全体を鳴らしているのだ。諏訪内の愛器は、ドルフィンと呼ばれる1714年製のストラディバリウスで、あのハイフェッツが所有していたものだ。
昨晩諏訪内はメンデルスゾーンの協奏曲を弾いた。全てのバイオリン協奏曲において、ソリストの音量は非常に重要だ。どんなにソリストの技量が優れていても、音量が足りなければオーケストラにソロが埋もれてしまう。音量不足のソロに対しては、オーケストラも音量を抑える傾向が現れ、自然と手加減したようなものになってしまう。
昨晩の演奏はそれとは反対に、諏訪内の音の明確さにシンクロして、オーケストラも思う存分ドライブしていた。力強いオーケストラの支えられ諏訪内の演奏も大輪の花を咲かせた。またその音量によって、細部の表現にも磨きがかかり、ロマン派の瑞々しさが爽やかに薫った。
本来技術的には全く申し分のない諏訪内に、この音量を得た事は何よりも最強の武器だ。メンデルスゾーンを皮切りに、チャイコフスキーやベートーヴェン、ブラームスなどの協奏曲の名曲を、彼女の演奏で聴きたいと思った。名曲の中に新たな発見ができそうな気がする。

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2008.04.26

ウゴルスキによる奇跡の名演奏

65才の小男はトコトコと舞台中央に歩み出て、満席の聴衆に向かって深々とその禿頭を下げた。その時はまだ誰もが、このロシア人ピアニストが信じられないほど雄大な名演を繰り広げるとは、予想していなかった。
アナトール・ウゴルスキは、1942年9月28日にソビエト連邦のアルタイに生まれる。レニングラードで音楽を学ぶが、現代音楽に強い関心を示したため当局から危険視され、演奏家としての道を断たれ、日の当たらない音楽教師の道を歩む。1990年にベルリンに亡命し、一時は難民キャンプに身を寄せていた。その頃、難民キャンプに滅法ピアノの巧いロシア人がいると話題になり、ついにはグラモフォンからメジャー・デビューを果たす。
昨夜ウゴルスキは我々ブリュッセルの聴衆の目の前で、ロシア・ピアニシズムの頂点とも言うべき、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を演奏した。
言うまでもなく、この協奏曲は超絶技巧の難曲であるとともに、古今のピアノ協奏曲の中でも一二を争う絢爛豪華な楽曲であり、多くの名演奏家達が名演奏を残してきた。また、コンクールなどでも若手ピアニストがその技巧を誇るために、必ずと言って良いほどレパートリーに取り上げる楽曲でもある。つまりそれだけ自分を含め多くの聴衆は、この曲を数限りなく耳にしている。
しかしウゴルスキはそのいずれとも違った。激しく疾走するする超絶技巧の演奏が多い中で、ウゴルスキは誰よりもゆったりとしたテンポで、野太く雄大な音楽を再現したのだ。冒頭の三拍子はまるでユーラシア大陸を覆うシベリアの大森林を思わせ、カデンツァに至っては顕微鏡で譜面を分析するような緻密さで、音符一つ一つを丁寧に再現したのだ。つまりウゴルスキは、チャイコフスキーがフリーズドライにした芸術を、掌でゆっくりと暖め解凍し、我々の目の前に再現したのだ。
率直な感想は、こんなピアニストがまだこの世にいたのかという驚きだ。それはまるでシベリアの森林でマンモスに出逢ったような気分だ。
聴衆は勿論、オーケストラも惜しみなく尽きる事ない喝采を送った。ブリュッセルの聴衆がこれほど熱狂したのは初めての経験だ。その歓声に応えるウゴルスキは、魔法の解けた小人のように、再び深々と頭を下げた。

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2008.04.22

フリーウエアのお勧め読書ソフト - smoopy

既に何度か書きましたが、普段パソコンで青空文庫の本を読むときには、azurというソフトを使っています。Windows版とMac版があり、外部のデバイスに書き出す機能もあって非常に満足しているのですが、有料で2,100円します。
もしこれをお読みの皆さんが、Windowsユーザーで、外部デバイスへの書き出し機能が不要であるならば、お勧めのフリーウエアがあります。
Screenshotsmoopysmoopyというソフトで、テキスト文書を縦書きに表示することができ、青空文庫を読むのに適しています。
まず文書を読み始めるには、二つの方法があります。一つは青空文庫からテキストファイルを予めパソコンにダウンロードしておき、それを開く方法。もう一つの方法は、「URLを開く」という機能から、青空文庫が公開しているHTML版の文書のURLを入力する方法です。インターネットに常時接続している環境であれば、こちらの方が便利です。
いずれかの方法で文書を読み込めば、すぐに縦書きの表示で読み始めることができます。但し初期設定の文字は小さく、長時間パソコンのモニタで読むのには適しません。
そこで「ページ設定」メニューの「スタイル設定」で、自分の読みやすい表示に調整しましょう。
まず大切なのは文字の大きさです。お勧めは24ポイントです。このぐらい大きいと目も疲れません。
次にフォントの種類です。これは好みの問題なので、ブロック体や明朝体でも構わないのですが、楷書体が一番見た目に美しいと思います。
それから行間も8ポイント程度にしておくと、全体にゆとりのあるレイアウトになり、読み疲れしません。
他にも背景の色を、真っ白ではなく、薄い肌色などにしておくと、見た目が落ち着きます。

以上、このsmoopyと青空文庫を活用すれば、全て無料で快適なパソコン読書が楽しめます。是非お試しを。

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2008.04.21

田山花袋著「田舎教師」

田山花袋の長編小説「田舎教師」は、全編を通して淡白で力んだところがなく、田舎暮らしの寂しさを感じさせる。主人公も大人しく、自我を貫くことをしない。心に思う女もあるが、誰にも打ち明ける事をしない。文学への憧れもあるが、それに人生を賭けることもしない。
「田舎教師」を評価しない人たちに言わせれば、「主人公に積極的な行動がなく、ただ運命を受け入れているに過ぎない」という指摘がある。その指摘は全くその通りで、主人公は、何となく生活のために教師になり、世に出て行く友人たちを尻目に、田舎で漠然と歳月を重ね、最後は悲しい結末で終わる。
しかし、これこそに現実的な説得力があるのであり、読む者が自分の境遇を重ね合わせる魔力を持っているのではなかろうか。もし主人公が艱難困苦を乗り越え、痛快にも立身出世したのならば、誰もこの小説に魅力を感じないだろう。運命に身を任せることしかできない人間の弱さこそ、目を逸らす事のできない現実なのだ。
この我らが心弱き主人公も、流石に途中平凡な暮らしに魔が差し、女郎に惚れて金を注ぎ込むことをする。借金が嵩み、教師の体面から女郎屋通いが世間に知られることを恐れる。ところがその女郎が身請けされ姿を消すと、暮らしを立て直そうと思い直し、元の慎ましさを取り戻すのだ。その頃、師範学校に通う元教え子の女生徒が、主人公に淡い恋心を寄せる。ここで小説が終われば、幸せな三流青春小説で終わったのだが、花袋は筆を止めなかった。
日露戦争開戦の頃から、主人公は病魔に伏せるようになる。貧しい暮らしの中で、季節と共に衰弱は進み、日露戦勝に沸く田舎町の陰で、主人公は若い命を閉じる。花袋はせめてもの慰めのように、主人公を慕った元教え子が数年後にその田舎町の小学校教師になったことを書き加えている。そして最後に、舞台となった田舎町に鉄道が開通するところで小説は終わる。

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驚異のギター奏法 Andy McKee

アンディ・マッキーという人です。
ギターを弾く一人として、素直に驚きました。
音声だけ聴けば、複数の演奏家による多重録音だと思ってしまいますが、こうして映像を見せられると、凄いとしか言いようがありませんね。

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2008.04.18

アレンスキーのピアノ三重奏曲第1番

米国ボストンにIsabella Stewart Gardner Museumという美術館があります。この美術館のつづれ織りの間において、定期的に室内楽の演奏会が催され、それがポッドキャストで配信されています。
いつもはそれを聞き流しているのですが、先日ダウンロードした分には、耳が反応しました。チャイコフスキー風のピアノ・トリオで、演奏にも迫力があって非常に良かったのです。
調べてみると、アントン・アレンスキーというロシアの作曲家によるもので、演奏はThe Chamber Music Society of Lincoln Centerのメンバーによるものでした。アレンスキーはモスクワ音楽院でラフマニノフに作曲を教えています。
普段ポッドキャストは何度も聞き直さないのですが、この演奏は永久保存版として、曲の前後のコメントや他の曲の部分を削って、AACに変換してiTunesに入れ直しました。

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2008.04.16

ビールの話を少々

夏時間になって、すっかり日が延びて、夜8時を過ぎても外は明るい。9時を過ぎる頃にやっと暗くなる。
こういう季節になると、平日でも帰宅後に近所の公園をジョギングできる。ジョギング後の楽しみと言えば、勿論ビール!
とは言っても、ベルギーに暮らし始めて1年になるが、日本の諸兄がイメージするベルギー・ビールとやらをほとんど飲んでいない。いつも買うのは、日本人が見向きもしない、地元労働者が飲むような格安庶民ビール。不味くはないが美味くもない。
そんな向上心のない暮らしの中で、先週の日経新聞土曜日版に「おすすめのベルギービール」10選が載っていた。いずれも小洒落た銘柄ばかり。とは言え、ここは虚心坦懐、ものは試しと、その記事のコピーを手に、第2位にランキングされていたDuvelデュベルを近所のスーパーで購入。330ml瓶6本セットで5.48ユーロ。この値段はベルギーでも高価な部類。庶民は普段買わない。ところが日本の正規輸入代理店の希望小売価格を知ってビックリ! 1本なんと525円。ヨーロッパ人は絶対に買わないと断言できる。
Duvel
値段の事はともかく、飲んでみると流石に美味い。苦くて濃くて、アルコール度数も8.5%あって、飲み応えがある。
2年間のドイツ暮らしで、「ビールはドイツに限る」という先入観から、ベルギー・ビールを飲み損ねていた。
ごめんね、ベルギー・ビールちゃん。これからはガブガブ飲むからね。以上、ホロ酔い気分で書きました。

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2008.04.03

細野晴臣「トロピカル・ダンディー」

Dandy
暦は四月、時計は夏時間だというのに、ここブリュッセルではまだ春の暖かさを実感しない。陽光が恋しいこんなときには、これを聴こう。
細野晴臣はっぴいえんど解散後、YMO結成前の1975年に作ったアルバム「トロピカル・ダンディー」である。このアルバムに続く「泰安洋行」と「はらいそ」を併せて、トロピカル三部作と呼ばれている。
これを聴けば、気分は南国の楽園めぐりの船旅だ。ヌルい海に足をピチャピチャさせているようだ。
ジャケットも良い。Tシャツにプリントして着たいくらいだ。
ああ、どこか遠くへ行きたいな。

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