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2008.02.10

嵐山光三郎著「文人悪食」新潮文庫

食べ物にまつわる軽いエッセイだろうと読み始めたら、小説家や詩人たち文人の本質を突いた評論となっていたのには感心した。
漱石に始まり三島由紀夫まで37人の食生活を切り口に、彼らの生活習慣や性格、生涯、それらと作品の関係が具体的に書かれており、納得してしまう点が多くあった。
例えば鷗外はナマモノを食べなかった。野菜はもちろん果物も煮て食べた。これはドイツで細菌学を学び、軍医として衛生学の権威であった鷗外らしい逸話だ。
泉鏡花はそれを上回る潔癖性で、大根おろしを煮て食べ、豆腐の腐の字を嫌って豆府と書いた。果ては「チョコレートは蛇の味がする」とまで言い出す始末。この食べ物に対する異常な精神が、あの名調子の華麗なる美文に関連すると考えるのも面白い。
一方で病床六尺の正岡子規は寝たきりで、狂気とも言えるほど意地汚く食い続けた。それは栄養補給の域を大きく超えて、食うことと書くことだけが、最後に残された生きている証だった。
意外な健啖家として宮沢賢治太宰治についても書かれている。賢治に至っては酒タバコも嗜み、高級料亭へも通った。何しろ玄米とは言え、一日に4合も食べていたのだから。
また更に、著者嵐山光三郎が編集者として実際に接した、檀一雄池波正太郎三島由紀夫などの話もリアルで興味深い。

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