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2008.02.23

ヒラリー・ハーンの行く道

昨晩ヒラリー・ハーンのリサイタルに行ってきた。昨年5月も素晴らしかったが、今回もひと回り成長したようだった。
伴奏のピアノは前回同様、ヴァレンティーナ・リシッツァ
今回はたまたま最前列の席だったので、4メートルほどの至近距離でヒラリーの演奏が聴けた。このぐらいの近さだとホールの音響に影響さずに、バイオリンそのものの音がダイレクトに耳に届く。
ヒラリーは薄いベージュのロングドレスに、踵が高いミュールを履いて登場。

1曲目はフランクのソナタ。フランクはベルギーの作曲家。4楽章構成なのだが、2楽章アレグロがあまりにも素晴らしかったので、会場から拍手が沸き上がってしまった。1曲目からロマン派の大曲に挑む気力に満ちていた。ヴァレンティーナのピアノも素晴らしかった。
2曲目はリラックスしてモーツァルトのケッヘル378、ソナタ34番。ヒラリーが得意とする軽やかで清楚な雰囲気を発揮していた。
3曲目は、イザイの無伴奏ソナタ5番。超絶技巧の難曲を完全に征圧し、聴衆を圧倒した。ヒラリーは幼くしてデビューしたため、コンクール歴はない。もし仮にコンクールに出ていたら、ダントツ満場一致で優勝するほどの正統派だ。何度出場しても毎回優勝できる。コンクールの課題曲にもなるイザイの難曲を、これほど原曲に忠実に演奏して、聴衆を魅了する力にはただただ感服するばかりだ。ちなみにイザイもベルギーのバイオリニスト。
休憩の後、4曲目はアイヴズのソナタ3番。これは少し難解な曲で、その善し悪しが判断付きにくかった。
最後の5曲目は、ブラームスのソナタ2番。これもまたロマン派の薫りを漂わせつつ、あまりロマンチックな甘さに流されない毅然とした名演奏だった。

Hilary何度も書くが、ヒラリー・ハーンは正統派だ。例えば、アンネ・ゾフィーチョン・キョンファが芸術の極限を目指す冒険者だとすれば、ヒラリーは独自の解釈や自分らしさすら排除し、ひたすら楽曲に忠実であろうとする殉教者だ。
きっと彼女が歩もうとしている道は厳しく辛い。しかしその道こそが王道なのだろう。そんな彼女を尊敬している。挫けず迷わず進んで欲しい。

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Comments

選曲がすばらしいですね。ベルギー聴衆への挑戦であるかのようで、自信にあふれていて。イザイの5番はすごく聞いてみたかったです。次回来る時には是非ってみることにします。それにしてもコンサートなどチェックが素晴らしい。ボザールのプログラムだけではなく、色々と情報招集してらっしゃるんですよね?

Posted by: あかね | 2008.02.24 at 02:47 AM

あかねさん、今のところブリュッセルではボザール専門で、フラジーにはまだ入ったことがありません。できればアムステルダムまで遠征して、コンセルトヘボウを一度聴いてみたいですね。
それからヒラリーの協奏曲もチャンスがあれば聴いてみたいです。

Posted by: umex@白梅亭 | 2008.02.24 at 05:20 AM

そうでしたか。フラジェーのホールは音楽にはどうなんだろう?ちょっと聞いてみますね。この間のアニマというアニメのフェスティバルには行ったんですが、コンサートはまだです。いい映画は時々上映してますよ。

 コンセルトヘボウは泊まりがけでないと難しいですよね。でもいいプログラムを選んで行くとその価値ありだと思います。 どちらかというと好みは深い音のロシアの演奏家で、技巧に走りがちな?アメリカの演奏家はあまり好きじゃないんですが、穿った偏見かもしれませんね。

Posted by: あかね | 2008.02.25 at 05:45 AM

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