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2008.02.25

桂枝雀「地獄八景亡者戯」

Shijyaku落語のDVDを観た。戦慄した。
この桂枝雀による「地獄八景亡者戯」は随分昔にテレビで観た記憶があった。但し、1時間番組で放送されたのは前編だけ。演目の長大さに驚いたのと、続きが聴きたい気持ちが強く残ったのを憶えている。このDVDでは、なんと休憩を挟んで、前後編全て収録されている。
元々は上方の古典落語なのだが、初めて聴いたときは、枝雀の創作落語だと思っていた。原型は江戸時代の町人噺のようなのだが、設定は現代風なのだ。
ストーリーは言うなれば地獄見物。あの世に辿り着いて、閻魔大王の裁きを受けるまでの珍道中である。地獄もすっかり資本主義の観光地のようになってしまっている。
この演目も何人かの名人が取り上げているようだが、落語もクラシック音楽と同じで、作品を演者がどう再現するかによって、全く別の面白みを味わえるようだ。
「戦慄した」と書いた訳は、枝雀の凄さだ。感心したのは、作品と現実が交錯する不条理を取り入れていた箇所だ。落語の中で落語を始めてしまったり、登場人物に自分は登場人物だと言わせたりしている。変だと思う気持ちが、おかしいのだ。
そしてこの天才は首を吊って、自らこの作品の中へと旅立ってしまった。枝雀師匠、このオチはおかしいと思います。

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2008.02.23

ヒラリー・ハーンの行く道

昨晩ヒラリー・ハーンのリサイタルに行ってきた。昨年5月も素晴らしかったが、今回もひと回り成長したようだった。
伴奏のピアノは前回同様、ヴァレンティーナ・リシッツァ
今回はたまたま最前列の席だったので、4メートルほどの至近距離でヒラリーの演奏が聴けた。このぐらいの近さだとホールの音響に影響さずに、バイオリンそのものの音がダイレクトに耳に届く。
ヒラリーは薄いベージュのロングドレスに、踵が高いミュールを履いて登場。

1曲目はフランクのソナタ。フランクはベルギーの作曲家。4楽章構成なのだが、2楽章アレグロがあまりにも素晴らしかったので、会場から拍手が沸き上がってしまった。1曲目からロマン派の大曲に挑む気力に満ちていた。ヴァレンティーナのピアノも素晴らしかった。
2曲目はリラックスしてモーツァルトのケッヘル378、ソナタ34番。ヒラリーが得意とする軽やかで清楚な雰囲気を発揮していた。
3曲目は、イザイの無伴奏ソナタ5番。超絶技巧の難曲を完全に征圧し、聴衆を圧倒した。ヒラリーは幼くしてデビューしたため、コンクール歴はない。もし仮にコンクールに出ていたら、ダントツ満場一致で優勝するほどの正統派だ。何度出場しても毎回優勝できる。コンクールの課題曲にもなるイザイの難曲を、これほど原曲に忠実に演奏して、聴衆を魅了する力にはただただ感服するばかりだ。ちなみにイザイもベルギーのバイオリニスト。
休憩の後、4曲目はアイヴズのソナタ3番。これは少し難解な曲で、その善し悪しが判断付きにくかった。
最後の5曲目は、ブラームスのソナタ2番。これもまたロマン派の薫りを漂わせつつ、あまりロマンチックな甘さに流されない毅然とした名演奏だった。

Hilary何度も書くが、ヒラリー・ハーンは正統派だ。例えば、アンネ・ゾフィーチョン・キョンファが芸術の極限を目指す冒険者だとすれば、ヒラリーは独自の解釈や自分らしさすら排除し、ひたすら楽曲に忠実であろうとする殉教者だ。
きっと彼女が歩もうとしている道は厳しく辛い。しかしその道こそが王道なのだろう。そんな彼女を尊敬している。挫けず迷わず進んで欲しい。

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2008.02.22

ブルックナーは5番よりは6番

昨晩、リエージュ・フィルの演奏会で、ブルックナー6番を聴いた。指揮はフィンランド人のペトリ・サカリ。
18日(月)にも別のオーケストラで5番を聴いたばかりだったので、その違いを実感できた。
結論から言えば、5番より6番の方が良い。
5番は対位法がしつこく、疲れるばかりで、面白みに欠けた。それに比べて6番は、構成が流れるようで華やぎがあった。
1時間近い大曲を演奏会で聴くとなると、観客にとって忍耐と集中力の勝負になる。楽曲が難解で退屈だと、客は早く帰りたくなるものだ。
ブルックナーは忍耐力の欠ける自分にとって、あまり好みの作曲家ではない。どちらかといえば、ブラームスやマーラーの方がずっと好きなのだが、やはり生でブルックナーを聴くと、それほど嫌いでもなくなってきた。

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2008.02.17

朝食付き格安演奏会

コーヒーとクロワッサン程度の軽食が付いた演奏会に行ってきた。料金は軽食込みの全席自由席で9ユーロ(約1,500円)。
勿論食べながら演奏が聴ける訳ではない。朝10時の開場で、ロビーで飲食できる。11時からの開演。
Katiaveekmans地元ベルギーで活動しているピアニストKatia Veekmansのソロ・リサイタル。日曜日の朝だったので、観客は子供連れの家族やお婆さんグループなど、夜の本格的な演奏会より、かなり雰囲気はカジュアル。
演目はショパン、ラフマニノフ、プロコフィエフ。ラフマニノフの「コレルリの主題による変奏曲」と、プロコフィエフのソナタ7番は非常に良く弾けていた。かなりの技巧派だった。
休憩なしで2曲のアンコールまで弾いて1時間半ほどで終演。
日本でこのレベルの演奏を聴こうとしたら、S席7,000円ぐらいするだろう。

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2008.02.15

Armand Amar & Lévon Minassian "songs from a world apart"

Songsfromaworldapart

魂が肉体を離れて、ここではない遠いどこかへ旅をするような音楽。
中央アジアの高原から、アンデスの山並みを眺めているような、不思議な気分になる。
最近就寝時に聴いて安眠している。

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2008.02.10

嵐山光三郎著「文人悪食」新潮文庫

食べ物にまつわる軽いエッセイだろうと読み始めたら、小説家や詩人たち文人の本質を突いた評論となっていたのには感心した。
漱石に始まり三島由紀夫まで37人の食生活を切り口に、彼らの生活習慣や性格、生涯、それらと作品の関係が具体的に書かれており、納得してしまう点が多くあった。
例えば鷗外はナマモノを食べなかった。野菜はもちろん果物も煮て食べた。これはドイツで細菌学を学び、軍医として衛生学の権威であった鷗外らしい逸話だ。
泉鏡花はそれを上回る潔癖性で、大根おろしを煮て食べ、豆腐の腐の字を嫌って豆府と書いた。果ては「チョコレートは蛇の味がする」とまで言い出す始末。この食べ物に対する異常な精神が、あの名調子の華麗なる美文に関連すると考えるのも面白い。
一方で病床六尺の正岡子規は寝たきりで、狂気とも言えるほど意地汚く食い続けた。それは栄養補給の域を大きく超えて、食うことと書くことだけが、最後に残された生きている証だった。
意外な健啖家として宮沢賢治太宰治についても書かれている。賢治に至っては酒タバコも嗜み、高級料亭へも通った。何しろ玄米とは言え、一日に4合も食べていたのだから。
また更に、著者嵐山光三郎が編集者として実際に接した、檀一雄池波正太郎三島由紀夫などの話もリアルで興味深い。

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カンボジアン・ロックは昭和の匂い Dengue Fever "Venus on Earth"

DengueiTunes Storeでこんなものを見つけまして、買ってしまいました。一言で言えば、なんじゃこりゃ?です。サイケな匂い満点の昭和歌謡といったところです。
このDengue Feverはアメリカ西海岸のバンドですが、コンセプトはカンボジア歌謡曲とサイケデリック・ロックの融合だそうです。歌詞はクメール語のようです。
この種の音楽は、生理的に全く駄目な人と、結構大丈夫な人に二分されると思いますが、自分は後者のようです。
なんだか、烏龍ハイとモツ煮が食いたくなってきた。

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2008.02.09

至福のリー・モーガン

前回に続いて追い討ちをかけます。リー・モーガンの天才ぶりが堪能できます。曲名は「クリフォード・ブラウンの思い出」です。こんな風にトランペットを吹ける奴を、他には知りません。

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熱いことになってるチュニジアの夜

アート・ブレーキーとジャズ・メッセンジャーズによる"A Night in Tunisia"のライブ映像です。かなり熱いです。
特にリー・モーガンが素晴らしい。やっぱり天才です。

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2008.02.05

手風琴に泣け - Richard Galliano Quartet "L'hymne à l'amour"

Gallianoリチャード・ガリアーノは、フランス系イタリア人のアコーデヲン奏者です。多彩な楽曲にも取り組むベテランですが、このアルバムでは哀愁たっぷりの曲も聴けて、アコーデヲンとビブラフォンの音色に泣けます。
泣けるのは、5曲目の"Soledad"。英語で言えばSolitude、孤独です。
それから8曲目のピアソラの"Romance del Diablo"は、お約束の定番ではありますが、やっぱりジーンときます。
他にも変わったところでは、バッハの「三声のインヴェンション第11番ト短調」も演奏しています。
タイトル曲の"L'hymne à l'amour"とは、エディット・ピアフの名曲「愛の賛歌」です。

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2008.02.03

オバマの演説

民主党の大統領候補の一人であるオバマの演説に人気があるそうだ。YouTubeでいくつか観たら、流石に巧い。

サウスカロライナでの勝利演説 2008年1月26日

最後まで聞いてしまう。


特に2004年7月27日の演説での、以下のフレーズが評判が良いそうだ。

There's not a liberal America and a conservative America; there's the United States of America. There's not a black America and white America and Latino America and Asian America; there's the United States of America.

成る程、大局的な視点で対立軸を超越して、大統領としてあるべき姿を示しており、なかなかの名演説であるが、所詮アメリカ合衆国という国家観を超越していないように思う。
ブッシュの世界的な不人気は、アメリカ至上主義にあった。次期大統領にはその払拭と、地球規模の問題への取り組みが求められている。自国益だけを優先した発想では駄目なのだ。アメリカのためならば、環境破壊も戦争も許されるような理屈になってしまう。
まあオバマはそんなに悪人ではないようだが、そう思っているアメリカ人も少なくないので、アメリカを治めるのは簡単ではないと同情する。
世界と人類のためならば自国の犠牲も惜しまないと言える政治家が、大手を振って歩ける社会の実現はいつのことだろうか。

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2008.02.02

中國鋼琴名曲集

Jiechen少し西洋音楽にも飽きてきたので、こんなものを聴いてみた。
中國鋼琴名曲集、つまり中国人作曲家による楽曲や、中国の伝統音楽をピアノ独奏に編曲したもの。それを中国人の若手女流ピアニスト陳潔(Jie Chen)が演奏している。
赤土の荒野に沈む夕日。満月を追いかける雲。
遥か東には、ここより豊穣な時間が流れているような気がしてくる。

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