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2007.10.27

知られざる無伴奏バイオリンの名曲

Khandoshkin
ハンドシキン(Ivan Yevstafyevich Khandoshkin)という作曲家は全く知りませんでした。1747年に生まれ1804年に没していますから、モーツァルト(1756-1791)と同時期の人です。ところがこの人はロシア人です。18世紀のロシアは音楽にとって辺境の地です。歴史に名を残せないのも無理はありません。
ところがこの人の無伴奏のバイオリン・ソナタが凄いのです。バッハのような構築美の中に、パガニーニのような悪魔的な技巧が垣間見られるのです。特に第1番のイ短調が素晴らしい。
NAXOSがCDを出しています。iTunes Storeでも試聴、購入ができます。

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2007.10.24

作曲家稲葉浩志について

Uura宇浦冴香のデビューアルバム”Juke Vox”を聴いてみた。なぜに現役女子高校生の歌を聴いたかというと、稲葉浩志がプロデュースと作曲をしていたからだ。
稲葉は普段のB’zとしての活動時は、ボーカリストと作詞家に徹し、作曲をしていない。相棒である松本孝弘が稀代のメロディーメーカーであるため、その必要がないのだ。しかしソロアルバムで聴ける稲葉の書いた曲はかなり面白い。コード進行が予想できないのだ。次に来る音が意外なのだ。それでいて繰り返して聴くうちに、癖になる魅力がある。
多分これは楽器演奏者による一般的な作曲法ではないからだろう。つまりギターなどを弾いていると、お決まりのコード進行の上にメロディーを乗せてしまう傾向がある。これはメロディーラインや楽曲の展開に安定感が出る反面、退屈な予定調和に陥る危険性を孕んでいる。稲葉の場合はこれとは異なり、歌うことでメロディーを生み出しているのではないだろうか。つまり楽器演奏から解放されたイマジネーションが感じられるのだ。
この宇浦のアルバムも、すぐに稲葉のものだと分かるメロディーが満載されている。宇浦の歌もまた凄い。とにかく高音を易々と出している。それも金属的なシャウトではなく、地声のような野太さがある。背丈が170cmあるそうなので、身体が木管楽器のように鳴っているのだろう。

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2007.10.18

うなぎの思ひ出

ベルギーにも、うなぎの料理があります。蒸した(?)うなぎにグリーンソースをかけたもので、個人的には×です。
思い起こせば、生まれて初めてうなぎを食べたのは小学4年生のときでした。夏休みに家族で母の郷里である長野県岡谷市に行ったとき、町のうなぎ屋で蒲焼を食べました。それまではうなぎなんて海蛇の親戚だと思って気味悪がっていて、それを美味そうに食べる両親をゲテモノ食いの変人だと思っていました。
「試しに食べてご覧」と母に薦められ、幼い妹は無邪気に差し出されたうなぎをパクリと食べました。「お兄ちゃん、これ美味しいよ」と顔を覗かれた自分は、兄としての威厳を保つために、勇気を振り絞り一口食べてみました。それは予想に大きく反して、なんとも美味いものでした。父は始終黙って微笑んでいました。
月日は流れ、今も日本に行くと、必ずと言っていいほどうなぎを食べます。老舗と自称する店で高価な特上を食べたりもしますが、初めて食べたあの日の味には勝りません。これはきっと味覚の記憶が昇華されているのだなと思っていたところ、先日ひょんなことから今になって、岡谷がうなぎの名産地だと知りました。たぶん諏訪湖で養殖しているのでしょう。
父や母は今もあの日のことを憶えているでしょうか? 妹はきっと忘れているでしょう。

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ハズレ率の低いミラノのレーベル"Schema Records"

その筋の人たちには有名なので今更なのですが、ミラノにSchema Recordsというラウンジ音楽のレーベルがあります。ジャズやエレクトロニカとジャンルは様々ですが、いずれもイタリー産らしく、ラテンの味付けが感じます。ボサノバ風のものも多くあります。
最近すっかり気に入って、続けざまにこのレーベルの作品を購入しています。比較的有名なアーティストと言えば、Nicola Conteでしょうか。

Eccoここでこのレーベルの入門盤としてお薦めするのは、Quartetto Modernoの"Ecco!"です。ビブラフォンとフルートを加えたジャズ・バンドです。ビブラフォンとフルートという繊細な楽器が、ラテンのリズムの上で軽やかに舞ったり、静かでスローな曲では涙さえ誘います。ジャケットもなかなか良いですね。

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2007.10.14

邦画"Le Détroit de la faim"とは?

Tomu
思いもしない日本映画が、欧州でもDVDで売られていることがあります。その一つがこれ、"Le Détroit de la faim"。フランス語のタイトルです。
この映画は初めて観ましたが、凄いの一言。こういう名画をベルギーで普通に売っていることに感動です。
さてこの映画、何だか分かりますか?
ヒント1:監督はTomu Uchida、つまり内田吐夢。
ヒント2:2時間55分のモノクロ大作です。
ヒント3:タイトルを英訳すると"The Strait of the hunger"。

そう、正解はこれ

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2007.10.12

ブラームスはナマにかぎる

昨夜リエージュ・フィルの演奏会に行った。
リエージュはブリュッセルからドイツ方向にクルマで1時間ほどの都市。ここのオーケストラは地元ではもちろん、ブリュッセルでも定期演奏会を開いている。今シーズン、このオーケストラを聴いたのは2回目。
昨夜はなぜか、高校生の団体客が入っており、ロビーはさながら学食の昼休みのよう。床に端座してフランス語で大騒ぎする子供たちのお行儀の悪さに肩をすくめたら、会場係員の若い女性も「そうよね」と言わんばかりに、同じジェスチャーで笑い返してきた。
それでも演奏が始まれば、この若い紳士淑女は水を打って静まり、文化的なマナーのよさに感心した。
昨夜の指揮は、先シーズンまで常任だったフランス人のLouis Langrée
3曲の演目の中で良かったのは、ブラームスの交響曲第2番
4曲あるブラームスの交響曲のうち、この2番は一番軽い印象を持っていたため、普段好んで聴くことがなかった。ところが生演奏を聴くと、流石にブラームス! 迫力満点で、聴衆を魅了するツボをしっかりおさえていた。CDでは「軽い」と感じていたこの2番も、目の前でオーケストラが躍動すると、その重厚なロマンティシズムに心臓がドキドキする。
会場を後にする高校生諸君もご満悦の表情だった。彼らの中から未来のマエストロが現れるかもしれないと思いながら、夜風に吹かれ駐車場までの坂道を下った。

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2007.10.11

“Who Says Elephants Can't Dance?” by Louis V. Gerstner, Jr.

Elophantsdanceずいぶん前に「巨象も踊る」というタイトルで邦訳が出版されていたが、その頃読むチャンスを逃し、今になって原書を読んでいる。
1993年から2002年までIBMのCEOを務めたルイス・ガースナー自身による著作。冒頭でゴースト・ライターは使っていないと明言している。
IBM建て直しの経験談を主軸に、経営論を展開しており、CEOに選ばれるまでの話は、ドラマチックで面白かった。彼の経営手法は特に目新しく驚くようなものではないのだが、当たり前の正攻法だったからこそ、あれだけの大企業を救えたのかもしれない。
時代遅れのメインフレームに見切りをつけ、e-Businessという言葉も世間に浸透させた。コンピュータの製造販売から、システムインテグレータ事業やビジネス・コンサルタント事業に重心を移したのもガースナーの功績だ。

とにかく読み易い本だ。良いビジネスマンが書いた文章は簡潔で良い。つまり人に考えを伝える技術が優れているのだ。自分の考えが多くの人に伝わって、それが共有されれば、組織は自ずと動き出すのだろう。
普段英語で仕事をしていて、うまく伝わっていないなと歯がゆいことがある。ここ数日、夜ベッドの中でこの本を読んでいると、ああこのセンテンス使えるな、などと少し気が晴れる。

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2007.10.07

ダウン系なBei Xu

Beixu
ベイ・シューという人は、日本ではそこそこ売れていると聞きます。
本人のやる気のほどは知りませんが、彼女のやる気のない歌い方が好きです。「別にどうでもいいのよ」という雰囲気は、彼女の音楽性にとって良いことだと思います。また自己主張や上昇志向剥き出しの歌い方は、この人の美貌と声質には不向きです。
特にアルバム"Lost in Translation"での松任谷由実の"A Happy New Year"のカバーは、力が抜けていて最高です。ユーミン自身、本来ダウン系だと思いますが、更にその下(?)を行っています。
彼女は結構マメにブログも書いていますね。

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2007.10.02

NHKスペシャル「映像の世紀」

Eizo最近連夜このTV番組をDVDで観ている。
1995年からの初回放送時にも観たし、何度かの再放送でも観た。その上数年前DVDボックスでも購入し、こうして繰り返し観ている。
まず、加古隆のテーマ音楽が非常に素晴らしい。番組冒頭でこの曲が流れると、目を閉じていても、20世紀の悲劇が万華鏡のように迫ってくる。
実際の歴史的映像で歴史振り返るという、この当たり前のコンセプトが素晴らしい。テレビという映像装置の最も根源的な機能を活用している。作り物の映像ではなく、本物で視聴者に伝えようとする姿勢が良い。
もちろんTV番組であるから、20世紀の歴史をこれだけで学ぼうとするには不充分だが、入門編としては最適である。ここから興味や関心のある事件や人物に取り組めば、充分勉強になる。
つまり自分自身何度もこの番組を観ることで、そのたび入門者に立ち返り、虚心坦懐で歴史と向き合えるのだ。

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2007.10.01

猪瀬直樹著「マガジン青春譜」

Magazine川端康成大宅壮一の前半生の評伝なのだが、その青春自体がまるで小説のように面白かった。
幼くして両親を亡くし、唯一の血縁であった祖父をも看病の後に亡くした15歳の川端。その頃1歳年下の大宅少年は傾いた家業(醤油の醸造と小売り)を一身に背負っていた。この不幸と苦労の二人にとってただ一つの救いは雑誌への投稿だった。同じ大阪の茨木中学に通いながら、二人が出会ったのは共に東京帝国大学の学生のときだった。このシーンはこの本のずっと後半。
ペンでは食っていけない川端は菊池寛に借金を請い、同じ頃大宅は芥川龍之介の明晰な頭脳に驚愕する。
この本は、川端と大宅の暮らしが安定し、隣同士に住み始めたところで終わっている。これから人生の本番が始まるというところで、彼らの青春を終わらせているところが巧い。

猪瀬直樹は「ミカドの肖像」以来、いくつもの素晴らしい本を書いているのに、テレビに出たり、道路公団民営化に取り組んだり、東京都の副知事になったりと、文筆業に専念しておらず残念至極だ。世のため人のために、もっと本を書いて欲しい。

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