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2007.05.06

Hilary Hahn Concert

昨晩アルテ・オパーヒラリー・ハーンを聴きに行った。
非常に人気の高いバイオリニストなので、客層も幅広く、若い人やクラシック初心者らしきカジュアルな服装の人たちが目立った。
何とかチケットの取れた席は、11列目で少し遠かったが、ヒラリー独特の澄んだ音色は、軽い二日酔いで濁った頭を爽快にしてくれた。
20時に開演。27歳のヒラリーは美人ではないが、愛嬌のある誰からも愛される風貌。これが演奏にも表れている。この日は、肩から腕を出したロングスカートのドレスで登場。
ピアノ伴奏はウクライナ出身のValentina Lisitsa。この伴奏者がとにかく巨大。なかなかのブロンド美人だが、ピアニストというよりアスリートの体格。この巨大さが、これも演奏に表れていた。
1曲目はLeos Janacekの4楽章ソナタ。この曲は初めて聴いた。ヒラリーの音色は、透明感のある美音である。アンネ・ゾフィー・ムターのような力強さや、チョン・キョンファのような冷徹さとは異なるタイプに属する。むしろヒラリーのスタイルこそが、フリッツ・クライスラーに通じる伝統的なバイオリン演奏のように思う。
2曲目はモーツァルトのケッヘル305。これは全く伝統的な演奏で、原曲の良さを伝えることを優先し、個性的な演奏は控え目だった。
そして3曲目は、タルティーニの「悪魔のトリル」。この曲は今年2月10日に同じアルテ・オパーで、巨匠アンネ・ゾフィーの演奏を聴いていたので、それと比べることができると楽しみにしていた。アンネ・ゾフィーは弦楽を従えた協奏曲版だったが、ヒラリーはピアノ伴奏だけのオリジナル版。
アンネ・ゾフィーはまさに気迫満点の悪魔的な演奏だったのに対し、ヒラリーは透き通った美音と、彼女の聡明さ明朗さが演奏に表れ、悪魔と言うより「天使のトリル」になっていた。特にカデンツァでは、手に汗握るアンネ・ゾフィーに対して、ヒラリーは一面に花の咲いた春の野山のように、我々聴衆に幸福感を与えた。これには観客も拍手喝采の大喜び。
ここで20分の休憩を挟み、4曲目は、ピアノ伴奏なしのバイオリン独奏曲。作曲者Eugene Ysayeとプログラムに書かれていたが、知らない。こういった無名な楽曲も積極的にプログラムに取り入れるところは偉い。
そして5曲目、この日の目玉は、ベートーベンの「クロイツェル・ソナタ」。これは非常に素晴らしかった。まずピアノ伴奏の大女が力量を発揮し、巨大なベートーベン像を構築し、その上でヒラリーのバイオリンが軽やかに舞った。繰り返しになるが、ヒラリーの天性の明るさが、聴く者を幸せにするような名演だった。
これでプログラム演目は終わり、当然アンコール。
アンコール1曲目はパガニーニ、2曲目はプロコフィエフのマーチ、3曲目は???
1曲ごとにヒラリーは曲名を言ったのだが、聞き取れなかった。
終演は10時半を過ぎていた。
演奏が終わって考えてみた。ヒラリー・ハーンの演奏の良さは、オーソドックスな楽曲の解釈と、美音とバランスだ。
実演を観て分かったのは、身体の動かし方が良いのだ。彼女はソリストだから当然起立して演奏するのだが、直立不動ではなく、身体を動かすタイプなのだ。まず、ヒールのない靴を履き、両足を肩幅以上に開く。但しこれはロングドレスに隠れていたため確認できなかったが、ロングドレスでそれを隠していることがそれを証明している。そして音楽に合わせてステップを踏む。そのステップはダンスのようなものではなく、まるで寿司職人が身体でリズムを取りながら、寿司を握る時の足裁きに似ている。良い寿司屋は手先で寿司は握らない。DVDで観たヒラリーの録音風景では、ジーンズに裸足で、その足裁きをしていた。
足腰の次に気付いたのは、弓を持つ右手の動かし方だ。まず肩から手首にかけてが非常に柔らかく動く。強くて大きな音には適さないが、美音はこの右手から生まれているようだ。また弓の使い方でも気付いたのは、それほど弓の長さ全てを使っていない。短いボウイングだけで演奏してしまう箇所もあった。また弓を引く動きと弓を押す動きの配分が絶妙なのだ。これが多分バランスの良い明るい音色を生んでいるように思えた。
いずれにせよ、ヒラリー・ハーンが次世代のバイオリンの巨匠になるのは確実である。

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Comments

Fiddle の名手 Alison Krauss も寿司職人のように体を揺らせて演奏していることを思い出しました.なーるほど.勉強になりました.

Posted by: 俊(とし) | 2007.05.06 at 10:23 PM

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