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2007.02.06

伊吹和子著「川端康成 瞳の伝説」

昨日書いた川端康成の「源氏物語」のことが気になって、いろいろと調べてみたら、川端の編集者であった伊吹和子が随筆にそのことを書いていた。その随筆が「川端康成 瞳の伝説」
そもそも伊吹和子は、高血圧症でペンが持てなくなった谷崎潤一郎の口述筆記者として現代語訳「源氏物語」に係わっていた。その後中央公論社に入り、編集者として川端を担当していたのだ。

この随筆によると、川端が伊吹に気を許すようになった頃、伊吹の出自や経歴を尋ね、谷崎源氏の口述筆記をしていたことに特に興味を持ったそうだ。
そしてノーベル賞を受賞した後の頃(瀬戸内寂聴の証言に近い)、川端から「谷崎さんの源氏の訳は、どのくらいの時間がかかりましたか」と尋ねられた。「新譯」は10年前後、仮名遣いを直すことが中心だった「新々訳」は2年程度だったと答えると、更に「新譯」の執筆手順を詳しく聞いてきた。そして、
「実は僕も、源氏を訳してみようかと思ってるんですけど」とぽつんと言った。
「谷崎さんのように学者のブレーンを頼まなくても、あなたが手伝ってくれれば、まあ五年で完結するでしょう。どうですか」
伊吹は胸が高鳴り、有頂天になってしまった。
伊吹は会社に駆け戻り、すぐに契約書を交わすことを上司に訴えたが、ノーベル賞のお祭り気分で冗談を言われたのだと相手にされず終わってしまった。
つまり伊吹は、瀬戸内寂聴が京都で見た原稿を見ていない。
本当に川端康成は、「源氏物語」の現代語訳に着手していたのだろうか。
鎌倉に住んだ川端が、横須賀線の車中で、木版の源氏を愛読していたことは有名だそうだ。

なおこの随筆は、日本ペンクラブの電子文藝館というサイトで全文読むことが出来る。文豪川端康成の素顔が垣間見えて非常に興味深い随筆だった。
このサイトでは他にも、著作権が消滅していない、志賀直哉や川端康成などの作品もある。

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