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2007.02.05

川端康成訳「源氏物語」

職場で日経新聞の欧州版をとっている。昼休みに2月3日(土)の朝刊を読んでいて驚いた。
瀬戸内寂聴が「奇縁まんだら」という連載エッセイに、川端康成が「源氏物語」の現代語訳を手がけていたと書いていたのだ。それも彼女が、京都の都ホテルの川端の部屋で、その原稿を目撃しているのだから、これは紛れもない事実だ。
以下、このエッセイから重要な点を抜粋すると、

部屋に通れといわれて入ったら、ドアから真正面の窓際の机の上に原稿用紙が広げられていて、今、置いた風情で万年筆が乗っている。あまり大きくない机の左側に、数冊の分厚い本が置かれている。すべてが源氏物語の古注釈書であった。
「先生、源氏の訳なさるんですか?」
 私が思わずすっ頓狂な声をあげると、
「ええ、まあ、やっぱりやってみようかと思って」
 と、ちょっと口元をゆるめられた。
「三人の訳があるから、今更と思ったけれど出版社がきかないんで」
 とおっしゃる。

この三人とは、与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子のことである。
川端は更にこの三人の源氏を次のように評してもいる。

与謝野さんのが一番簡潔でいいんじゃないですか。谷崎源氏は訳と言うより、原文そのままの感じがする。円地さんのは、あれは円地さんの小説源氏だね」

知っての通り、川端はこの源氏物語を世に出していない。幻の作品なのだ。川端がそんな仕事をしていたとは、今日まで全く知らなかった。これは大変な歴史的証言だ。
もし川端がそのまま源氏を書き上げていたら、日本人にとって大きな文学的遺産になっていただろうと、悔やまれてならない。

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