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2006.12.24

松本清張著「日本の黒い霧」

すっかり夢中に読んでいる。
戦後間もない頃の怪事件を扱ったドキュメンタリー集。
下山事件、帝銀事件、松川事件と言った聞き覚えのあったものから、もく星号遭難事件、白鳥事件、ラストヴォロフ事件、鹿地亘事件など、初めて知った事件もあった。
中でも下山事件は圧巻で、下手な推理小説などよりはるかに不可解で、欧米のポリティカル・スリラー並みにスリリングだ。
昭和24年7月5日、初代国鉄総裁の下山定則が、その日の朝出勤前に、運転手に命じて不自然な寄り道をし、午前9時半頃、自ら日本橋三越店内に入ったきり行方不明になる。
その晩の上野発松戸行きの最終電車の運転手が、北千住−綾瀬間の東武線との立体交差を過ぎた付近で、前方に礫死体らしきものを発見。綾瀬駅停車時に駅助役に報告し確認させたところ、下山総裁の礫死体であることが判明。
ここからの捜査の話は複雑なので、ここには書ききれないが、最終的に捜査当局は自殺として決着を付ける。ところが松本清張は謀殺だと書いている。それもGHQの何らかの組織による大がかりな計画的な謀殺だと。
下山総裁は事件当時、国鉄労組と大幅な人員削減を巡り、深刻な労使交渉の真っ只中にいた。当時の日本は、乱暴に言えば、これらの労働運動と共産主義運動により、大きく左に傾いていた。米国の世界戦略としては、ソ連や中国の覇権拡大に対する東アジアでの防波堤として、日本が左傾していくことは傍観できなかった。
ところが下山事件後、世論は突然の如く左傾を停めた。
つまり松本清張の推理は、GHQが下山総裁を殺したことで、世論に対し労組による謀殺の疑念を抱かせ、左傾を食い止めたというのだ。
この下山事件と並んで、驚いたのは帝銀事件だ。興味の湧いた方には、一読をお奨めする。

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