« 中尊寺ゆつこと杉浦日向子を偲んで | Main | "Calypso@Dirty Jim's " »

2005.08.08

伊丹十三著「ヨーロッパ退屈日記」

昭和四十年というから1965年、今から40年前に出された本とは思えない。とにかく面白い。ヨーロッパの上流社会の優雅な生活を描いている。今の日本人で、これ程の域に達した人が、このヨーロッパに何人いるのだろうか。
象牙色のジャギュア・マークⅡで動物園に蟻喰いを見に行き、そのジャギュアを駆って、ロンドンからドーバーを飛び越え、パリやスペイン、イタリアまで足を伸ばす。そしてまた、スクリーン・テストに合格した自分へのご褒美にロータス・エランを注文。
クルマだけでなく、ファッション、料理、語学、更には本業の映画や演劇に至るまで、洗練された博識が披露されている。
交友関係も豪華な登場人物を配しており、ヴェニスで三船敏郎とタタミイワシを焙り、チャールトン・ヘストンから、ロンドンの高級店で乗馬靴を注文した時の失敗談を聞く。
ハリウッドの端役時代から、ロンドンで乗馬靴を注文するのが夢だった彼は、勇気を出して店に入ったが、どんな種類の馬に乗るのかなどを事細かに尋ねられ、やっと寸法を取った後、足のレントゲン撮影までされた。注文して半年後に乗馬靴は届けられたが、中に入っている木型がどうしても取れない。「多分、あれは乗馬靴じゃなくて、木型を保存するための革ケースだったのかもしれんね」と大スターは赤面した。それを聞いた映画プロデューサーが、ロールス・ロイスを注文した時、扉の外につける御紋章はいかがいたしましょうか、と聞かれて困ったというオチは高次元だ。
確かに今もこのヨーロッパには、階級社会が生き続けていると感じることがある。
いつもジョギングしているマイン河畔のボートクラブには、週末の宵ともなると、タキードとドレスの紳士淑女がメルツェデスで集い、河畔を見下ろすクラブハウスのテラスでシャンパンを傾けている。河畔の芝生で日光浴しているのは低所得のドイツ人労働者かトルコ人、東欧人が多く、ビールを片手に、走っているこの日本人を奇異の目で見上げている。

|

« 中尊寺ゆつこと杉浦日向子を偲んで | Main | "Calypso@Dirty Jim's " »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/7525/5365005

Listed below are links to weblogs that reference 伊丹十三著「ヨーロッパ退屈日記」:

« 中尊寺ゆつこと杉浦日向子を偲んで | Main | "Calypso@Dirty Jim's " »