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2005.02.05

長部日出雄著「二十世紀を見抜いた男 - マックス・ヴェーバー物語」

社会科学者の評伝。時代に先駆け近代合理主義を論じた名著「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」に至るまでの、ヴェーバーの生涯が、物語風の読み物として書かれている。
物語の舞台となる19世紀から20世紀に至るドイツは、我々日本人には馴染みが薄い。著者はそれを考慮し、冒頭で森鴎外を登場させている。ヴェーバーは鴎外より二つ年下。軍医としてドイツに留学した鴎外を使って、当時のドイツの様子を書いている。
更にドイツ皇帝ヴィルヘルム一世や、宰相ビスマルクを書くために、憲法調査でドイツに長期滞在していた伊藤博文も登場する。
ヴェーバー自身には当然、鴎外や博文をはじめとする我々日本人との交流はない。しかし彼ら明治人とともに物語が進められると、当時のヨーロッパにおける新興大国ドイツが、グッと身近に迫ってくる。
ヴェーバーの著作については、多くは書かれていないが、数年間精神の病に苦しみ、睡眠も満足にとれず、人と接することも、読書すらも出来なくなってしまったヴェーバーの姿は、彼の思想以上に強烈な印象を残した。そして何よりもこの病の後に、歴史に残る労作「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」をまとめ上げたのだ。

考えるに、
我々人類のほとんどは、身近な小さな世界の中でその短い生涯を終えていた。ところが18世紀、啓蒙思想や産業革命によって、突然世界が拡大し、時間や利害という概念が、人生や暮らしを支配するようになった。その結果、19世紀には近代兵器による大規模な国家間の総力戦争が起こり、人類一人一人にも心の病が広がった。ヴェーバーはその被害者の一人でもあったではなかろうか。
ヴェーバーの病を読んで思い出されたのが、敬愛する作曲家ラフマニノフである。革命前のロシアに生まれ育ったラフマニノフも、20世紀を目前にして心の病に苦しむ。そして病から立ち直り世に生み出したのが「ピアノ協奏曲第2番」である。
21世紀の現代においても、科学技術は発展し、社会構造は益々複雑化している。地球上からは貧困や憎悪による殺し合いは消えず、更に自然環境までをも破壊し、新種の病が次々と現れている。見渡せば、リストラに脅え、満員電車に揺られ、住宅ローンを抱え、カルテに書き込まれない悩みや不安を誰もが背負って暮らしている。
マックス・ヴェーバーの不安は、100年後の今も尚、解決されていない。

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