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2004.11.29

日本経済新聞社編「働くということ」

hataraku.jpgまず、この本の元となった新聞連載の取材班に敬意を表したい。事件や事故だけではなく、こういった市井の庶民を地道に追った取材は、実に立派な仕事だ。ジャーナリズムが不甲斐ないと感じていた昨今において、この本で新聞記者を少し見直した。
当然の如くフィクションではなく、これだけ多様な生き方を紹介した本はないと思う。数え切れないほどの登場人物達は、実に様々な悩みや不安、夢や希望を抱いて「働くということ」と向き合っている。
この本に解答はない。不安や迷いが晴れる訳でもない。むしろ混迷した世の中に頭を抱えるかもしれない。
但し、ひとつだけ明らかに感じたのは、働くことは金のためや、生活のためだけではないということだ。だからこそ人は、如何に働くか、何のために働くのかと迷い悩むのだ。それは苦しく辛いことかもしれないが、とても大切で尊いことだと思った。
この本は、就労前の中高生に読んでもらいたい。もちろん、いくつ歳を重ねても、働く事への迷いを捨てきれない同輩諸兄にも一読願いたい。悩み苦しんでいる多くの戦友に出会える。

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2004.11.28

三本和彦著「『いいクルマ』の条件」

世に自動車評論家多かれど、最も真摯で現実的なのは、著者三本和彦氏をおいて他にない。多くの評論家諸氏は自らの好みに頼り過ぎ、多様なカーライフを想定していない。高級車や競技車両ばかりがクルマではない。
三本和彦といえばテレビ神奈川の「新車情報」において、辛口のコメントでメーカー担当者を常に戦慄させている。その三本氏の書いた本。期待を裏切らず、客観的にクルマを評した良著だった。
例えば、ホンダNSXのオートマチック車を「乗りやすさと走りの楽しさが両立した見事なクルマ」と評して、スポーツカーであろうとも、クラッチが異常に重いなどといった乗りにくさは良いことではないとしている。全く同感だ。また昔の名車へのノスタルジーに縛られた自動車評を否定し、客観的に最新型モデルの優位性を説いているあたりは痛快だ。さらに日本の道路幅から小型車の車幅の合理性と利便性も的確に説明してる。
特に感心したのは、「若者に学びたい大事なこと」と題した項で、
「私は、日本の今の若い人たちを、ある意味で評価しています。なぜなら、クルマ好きの割合が減り、クルマを特別視しなくなったからです。これはクルマ社会の成熟への第一歩だと思っています。」
まさに卓見だ。これこそ自動車評論家が語るべき言葉だ。
偏ったクルマ好きにではなく、本当に暮らしやすく気持ちの良いクルマ社会を望む人には共感の多い本だと思う。
何につけても「こだわり」は大切だが、こだわりを捨てた広い視野を持たなければ、こだわりが活きてこないと改めて感じた。

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2004.11.21

Monpou "Complete Piano Works"

monpou.jpg作曲者であるFederico Monpou(1893-1987)自身による1974年の演奏。CD4枚組だが、2千数百円と格安だった。クラシックのCDって名盤がビックリするほど安いんだよね。
「スペインのサティ」と呼ばれただけあって、静かでシンプルな中に、深い思索が秘められているように聞こえる。
初めてモンポウを耳にしたのは、イタリアの名ピアニストであるアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリが数曲演奏していたCD。完璧主義で独特のこだわりがあったミケランジェリが選曲したというだけで強烈に記憶していた。何せ変人ミケランジェリは、ラフマニノフの協奏曲のうち4番しか録音していない。2番や3番ではなく4番だ。また、教えを請いに来たアルゲリッチに卓球の相手ばかりさせたという逸話も残っている。大戦時には戦闘機のパイロットでもあったそうだ。しかしこの変人でヘソ曲がりだったミケランジェリのピアノ演奏は、そのラフマニノフにしても、モンポウにしても、完璧だった。
そういえばこのモンポウにも、ミケランジェリが得意としたドビュッシーのような、絵画的な要素が感じられる。ただドビュッシーよりも暖かい。冬の午後の日だまりのようだ。スペインは冬でも日射しが眩しいところだからね。
モンポウを聴いてミケランジェリを思い出した。

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The Beatles "The Capitol Albums Vol.1"

capitol.jpg不思議と甘酸っぱい感じがした。リアルタイムでは聴いていないのに、なぜだろう。

アメリカのキャピタル・レコードが1964年に出した編集盤アルバム4枚"Meet The Beatles !","The Beatles' Second Album","Something New","Beatles '65"をCDボックス化したもの。つまりイギリスのオリジナル・アルバムと異なる。
リバプールの下層階級出身の若者4人が、大英帝国の旧植民地大陸に乗り込み、母国に外貨を稼ぎ戻し、女王陛下に勲章をもらった。まるでお伽噺だ。その4人組が一番輝いていた時期の記録だ。マージー・ビートと呼ばれたサウンドは、斜陽の英国に一筋の光を与えたに過ぎず、世界に若い世代が主導する商業文化を根付かせた。アメリカ産のプレスリーとは一線を引き、固定の複数メンバーで楽器を演奏し、歌を唄うというスタイルを確立した。それは従来のコーラス・グループでもなく、ジャズ・バンドでもなかった。
元来リアルタイムにBeatlesを体験していない自分にとって、中学生の時に手にした赤盤と青盤がBeatlesの全てだった。それ故にオリジナル・アルバムであるか否かは、今もなお重要ではない。勿論後期の活動においては、コンセプトのあるアルバム作りをしていたため、複数の楽曲の組み合わせが意味を為したが、この"The Capitol Albums Vol.1"の時期は、シングル曲の発売と、ラジオでのオンエア、そしてライブ演奏が主であったため、1枚のレコード盤にどの曲を収めるかや、曲の順番をどうするかは、個々の作品とは無関係だった。それを思えば、この"The Capitol Albums Vol.1"は瑞々しいBeatles前期を網羅し、その当時の雰囲気を伝えるには相応しいボックス・セットだと思う。

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2004.11.20

Jimmy Page & Robert Plant "No Quarter - UNLEDDED" DVD

noquarter.jpgCDとDVDの買い出しに行ったら、前情報もなくこんなDVDが出ていたので購入。
1994年の映像。当時リリースされたVHSビデオの内容に、ボーナス2曲とインタビューが追加されている。同名のCDは持っていたが、映像は今回DVDにて初入手。
Zep.のアコースティックな楽曲を中心に構成しているところは正解だ。激しい楽曲は、声も出ないし、指も動かないと、二人は悟っていた。第一、Bonzoが叩かなければ成り立たないのだ。
当時、もうPageは指も動かず引退同然と思いこんでいたが、この時の"Since I've Been Loving You"を聴いて、ブルース・ギタリストとしてはむしろ熟成したと驚喜したものだ。また弦楽セクションを加えた"The Rain Song"のスタジオ・アルバム並みの出来の良さにも感嘆した。"Kashmir"でPageが見慣れないレスポールを弾いている。ギターシンセだろうか?
これらを映像として確認できたのが収穫だ。
Zep.以外の楽曲"City Don't Cry"や"The Truth Explodes","Wha Wha","Wonderful One"もまた、無国籍な民族音楽風で、なかなか良いと思う。この方向の気持ち良さには共感できる。Zep.ではない二人の音楽への探求が健気だ。
何よりこの二人に感心したのは、Led Zeppelinの名を使わず活動したことだ。Led Zeppelinは、あのときの、あの4人でしかあり得ないのだ。

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丸谷才一著「挨拶はたいへんだ」

我が敬愛する文豪によるスピーチ集。とはいっても、講演のような長いものではなく、祝辞や弔辞、乾杯の音頭と言った2,3分程度のもの。小説は勿論エッセイの名手だけあって、流石だなと感心すること仕切りだ。
良いスピーチは、前置きがなく簡潔で、エピソードを含んでいる。その好例として、著作「忠臣藏とは何か」が文芸賞を受賞した式での挨拶。
「どこの家でもさうかもしれませんが、」といきなり始まり、「わたしは子供のころ、わりに大き目の服を着せられてゐました。すぐに丈が伸びるから、もつたいない、といふわけであります。」と切り出し、「これをわたしの姉は、『五ケ年計画』と言つてからかふのでした。」と聴衆を和ませる。が何を話し出したのかと少し不思議に思わせる。
その後、大きめのパジャマのズボンの裾を踏むようにしてはいて「浅野内匠頭」と得意になったと、スピーチのテーマを引き寄せ、「わたしはあのころから、忠臣藏を服装論的、衣装論的にとらえてゐたのかもしれません。」と見事に結ぶ。
スピーチにはいつもアドリブではなく、原稿を用意して臨むそうだ。突然会場で依頼されても、頭の中で原稿を組んでからスピーチするらしい。

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2004.11.16

「ビッグイシュー日本版」

bigissue.jpg以前から気になっていた。街角でホームレスのおじさんが、片手に掲げ、立ち売りしている雑誌。今日200円手渡して買ってみた。
手に取ってみると、わずか30ページの薄っぺらなフリーペーパーのよう。内容も正直言ってツマラナイ。200円は高い。無料のR25の方がよっぽど面白い。
しかしこの200円には意義がある。このビッグイシューは、「ホームレスの仕事をつくり自立を応援する」雑誌なのだ。
この雑誌の販売を希望するホームレスは、まず最初10冊を無料で受け取る。この10冊が売れると2,000円の収入となる。この2,000円を元手に、2回目以降は1冊90円で仕入れ、200円で売ることで110円の利益を得る。この販売員になるためには、販売場所や販売マナーなどを定めた行動規範に同意しなければならない。
内容はツマラナイと書いたが、唯一熟読してしまったページがある。販売員を紹介する「今月のひと」の記事だ。路上生活を始めた様々な事情。雨の日も、寒い日も、1日中立ちっぱなしでビッグイシューを売る。売れる日もあれば、売れない日もある。新宿西口に立つ74歳の販売員は、1日平均30冊売るという。30冊だと、3,300円の利益だ。空腹と寒さを凌ぐだけで消えていってしまうような額だ。
昔から街頭募金の類が嫌いだ。しかしこのビッグイシューは違う。ホームレスが自らの労働で金銭を得ようと、正々堂々と雑誌販売に従事しているのだ。
今日の販売員のおじさんは、200円手渡すと本当に嬉しそうに「ありがとうございます」と深く頭を下げてくれて、こちらが恐縮するほどだった。
毎月1日と15日の2回発売されている。しばらく購読しそうだ。

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2004.11.14

「ビジネスリーダーの英語」

BizEng.jpg日本駐在の外資系企業トップ10人へのインタビュー集。対訳、語注、解説の載った本に、インタビューCDがついて1,600円。英語の勉強を兼ねて購入。CDをiTunesに入れて、本を見ながら繰り返し聞く。最初は聞き取り辛かったが、慣れると文字よりも意図が伝わってくる。それでも専門用語や抽象的な表現が続くと理解できない。英語力不足を痛感。
仕事の都合、電話で英語を使うことが時々ある。自分が言いたいことは前もって頭の中で組み立てているので、全く話せないということはないが、聞くことに関しては、不自由することが多い。話せなくても聞き取れれば、情報獲得にはなる。まずは「聞く力」だな。
気を取り直し、初歩からやり直しだと思い、VOAのSpecial Englishを最近聴取している。VOAとはVoice of Americaというアメリカの海外向けラジオ放送局。昔は短波ラジオで聴いたものだが、今はインターネットを通じてWebキャストでも聴取できる。そのVOAの中でSpecial Englishという30分番組は、非英語圏の聴取者を対象に、簡単な英単語を使って、かなりゆっくりと話すニュース番組。曜日によっては、ニュース以外にも短編小説の朗読もある。聴取にはReal Playerが必要。

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2004.11.07

"LONGMAN Active Study Dictionary 4th edition"

LASD.jpg英英辞典が欲しくなって、丸の内OAZO丸善へ行った。
OAZO丸善は何度か行っているが、いつも仕事の合間に寄るので、1階のビジネス書で時間オーバーになってしまい、上階に昇ったことはなかった。まずは3階の和書の辞書コーナーに。が、気に入ったものがなく、4階の洋書の辞書棚に。
いくつか手にとって、使い勝手を比べてみた。辞書を選ぶ時、いつもやっているテクニックとして、同じ単語をひいてみる。いかに端的に分かり易く書かれているかで選ぶ訳だ。今回は適当に開いたページにあった"death"で比較してみる。
ある辞書は哲学的で回りくどかったり、またある辞書は難しい単語を使っていて意味不明だったりした。最終的に選んだこのLONGMANのActive Study Dictionaryでは"death"を、"the end of someone's life"としていた。シンプルで実に分かり易い。またこの2004年の第4版はフルカラーで、使用頻度の高い単語の見出しが赤文字で、その他が青文字で見やすくなっている(本文は黒文字)。カラフルな挿絵も多からず少なからずの塩梅で、実によろしい。この辞書のサブタイトル(?)も気に入った。"helps you build your vocabulary" そうなんです。語彙が不足しているんです。いつも同じ単語で片付ける症状が出始めているんです。

帰りの地下鉄で"love"を引いてみた。
"a strong romantic feeling for someone"
おぉ、なるほど、そう来るか。"strong"がミソだな。何だか新鮮な気分だぞ。英英辞典は面白いなぁ。

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