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2004.10.30

鈴木敏文「商売の原点」「商売の創造」

セブン-イレブンとイトーヨーカ堂の会長である鈴木敏文の本。とは言っても、本人が著したものではなく、会議でのスピーチの速記録を編者がまとめたもの。
2冊に分刊されてはいるが、取り上げているテーマは同じで、セット上下巻と位置付けられる。内容自体も、順序立てて論説する訳でもなく、まさに社員を前にした朝礼スピーチ集、会長語録といったところだ。そのためマーケティングの教科書には成り得ないが、事例がリアルで興味深い読み物になっている。
但し書かれていること(言っていること)は、当たり前なことばかりで、成功の秘密めいたものは見当たらない。基本四原則と称して繰り返しているのは、「品揃え」、「鮮度管理」、「クリンリネス(清潔)」、「フレンドリーサービス」と意外性はない。しかしそれら基本の徹底を強く訴え、毅然と会社のあるべき姿を断言している魅力は大きい。
「われわれにとっての最大の競争相手は、同業の他社・他店ではありません。世の中の変化、お客様のニーズの変化こそ最大の競争相手なのです。」また価格訴求による安売りを嫌い、価値訴求をしていれば必ず売れるとも断言し、「私たちは価値を売る企業だ」と、社員からすると何とも心強いトップである。

ヤオハンの和田一夫、ダイエーの中内功とコケてしまった今、流通業界で注目すべき経営者と言えば、鈴木敏文をおいて他にない。
しかしながらつくづく考えさせられるのだが、中小企業ならばまだしも、日本有数の大企業になっても経営者一人の優劣が、社業に大きく影響するのものなのだろうか。
ドラッカーに学ぶまでもなく、大規模の組織となれば、個人の力量だけで組織的成果を残せるようなものではないと思う。トップがすべきは、優れたマネジメント・チームを所有し、縦横に使いこなすことだと思う。
それを思うと、鈴木敏文にしても、カルロス・ゴーンにしても、孫正義にしても、彼らを支えるマネジメント・チームにこそ、優れた経営の本質があるようにも思えてならない。

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ASIA "Silent Nation"

asia.jpg「原点回帰」という売り文句で店頭に並んでいたが、昔のようなキャッチーなポップスではなく、むしろコンサバティブな風格がある作品になっていた。

とは言え実は、店頭で手にするまでは、
あれ、ASIAって、まだやってたの?
自然解散したと思ってた。

ASIAと言えば、1982年のデビューアルバム"ASIA"が凄かった。世界で1,200万枚も売ったのだ! それもそのはずで、King CrimsonのJohn Wetton(Bass)、YESのSteve Howe(Guitar)とGeoff Downes(Keyboards)、E.L.P.のCarl Palmer(Drums)というプログレ界の重鎮4人が結成したスーパーバンドだった。
同メンバーで1984年には2ndアルバム"ALPHA"をリリースし、これも大ヒットしたが、その後はアルバム毎にメンバーチェンジを繰り返し、作品のスタイルも変貌した。ASIAをちゃんと聴いていたのは、この2枚だけだった。
この最新作"Silent Nation"で残っているオリジナルメンバーは、Geoff Downesだけ。Palmerの軽快なドラムも、Howeのスリリングなギターも、Wettonの味のある声も聴けない。
但し冒頭にも書いたように、オリジナルASIAとは別モノとして、大人がじっくり聴ける落ち着いた作品に仕上がっている。キャッチコピーをつけるならば、「四拍子の王道」といったところか。

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2004.10.23

「コトラーのマーケティング思考法」

フィリップ・コトラーとフェルナンド・トリアス・デ・ベスの共著
コトラーの既存の大著群に比べると、コンパクトで読み易い。片手を電車の吊革にかけていても読める。コトラー本と言えば広辞苑並みに重く大きかった。これまでは本を売るというマーケティングが弱かったと思う。冗談はさて置き、
この本では水平思考(lateral thinking)で発想する「ラテラル・マーケティング」を取り上げている。
まず伝統的なマーケティング思考法として、垂直思考(vertical thinking)による「バーティカル・マーケティング」について書かれている。これは市場を細分化し(segmentation)、標的市場を決定し(targeting)、その市場の中での位置付けを明確化する(positioning)、という基本的手法によるものである。このバーティカル・マーケティングは、既に存在する成長途上の市場では有効だが、成熟してしまった市場では、市場を守ることぐらいしか効果が得られない。全く新しい市場を創造し、新しい製品やサービスを投入するには、水平思考によるラテラル・マーケティングが必要だと説いている。
いくつもの事例を挙げて、このラテラル・マーケティングを説明しているが、一番馴染み深い事例が、「ソニーのウォークマン」だ。ウォークマンは再生専用の携帯型オーディオという、それまで存在しなかった製品で、全く新しい市場を創造した。当初はそのメディアは、カセットテープだったが、その後CDやMD、シリコン・メモリーやハード・ディスクなどにも派生した。音声再生に限らず、映像も楽しめる携帯型DVD再生機にも派生している。
つまり、初代ウォークマン登場がラテラル・マーケティングで、その後の派生がバーティカル・マーケティングによるものだ。iPodもこの理屈に照らせば、画期的なことではない。
またソニーはこの市場にCDやMD、HD等の様々な記録装置によるウォークマンを投入しており、共食いを起こしているとも考えられる。
ソニーが近年行ったラテラル・マーケティングはAIBOだろう。それまでになかったエンターテイメント・ロボットという市場を創出した。

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2004.10.11

吾妻光良& The Swingin' Boppers "Swing Back with Swingin' Boppers"

SwinBop.gif凄いアルバムだ!
今で言えば、the Brian Setzer Orchestraと同じフォーマットになるのだろうが、このスイングしたブルース、つまりジャンプやブギと呼ばれる曲調としては、Swingin' Boppersの方が遥かにエキサイティングだ。
1983年、高円寺のライブハウスJirokichiに8トラックの機材を持ち込み録音しただけあって、現代のクリアで広がりのある音とは全く違っている。但し切れ味と臨場感はこちらの方がずっと凄い。特に吾妻のギターの乾き具合は必聴モノだ。嘘か誠か、アンプを女子トイレに置いたらしい。
音だけでなく演奏自体も荒々しい。ホーンセクションとフロントマンの吾妻が煽り合っている。吾妻のギターと歌の巧さは絶品だ。
とにかく楽しいし、ドキドキするアルバムだ。CDとして再発されるまでは、廃盤となっていたこのアナログ盤に数万円の高値が付いていたのにも納得できる。

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