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2004.08.29

山内英子著「トヨタ『イタリアの奇跡』」

まず「トヨタ」と「イタリア」と言う組み合わせに興味を持った。自動車が文化にまで昇華された国イタリアで、日本の自動車メーカーの中でも最も産業臭が強いトヨタが、どうして売れているのか? 日本でさえ保守的なイメージの強いトヨタが、なぜあの情熱的なラテン民族に受け入れられるのか?
答えは2つあった。小型車ヤリス(日本名ヴィッツ)のヒットと、イタリアトヨタの北村憲雄社長の経営手腕にあった。
ヴィッツは日本でもヒットした車種だ。性能の良さは勿論、スタイルも従来のカローラなどに比べると精錬され、初見時は欧州車かと思ったほどだ。しかしイタリアで小型車を売るとなると、国産のフィアット・プントを筆頭に、隣国のプジョー206やルノー・クリオといった名車が競い合っている。
そのような強敵揃いの成熟市場で、イタリアトヨタは販売体制の変革を行った。その陣頭指揮を執ったのが北島憲雄社長であった。それまでイタリアでのトヨタは、ランドクルーザーをメインとした高級スペシャルティー車種が、販売の中核を為していた。このカテゴリーは、ブランド向上と利益率に貢献はあったが、業績拡大への量販志向には反していた。この状況で北村は戦略を変え、ヤリスを主力車種とした量販体制に乗り出した。
戦術のポイントは、ディーラー網の整理拡大と、アフターサービス体制の強化充実だった。いずれも量販するには不可欠だが、量販しているからこそ維持拡大できるものでもある。つまり卵が先か、鶏が先かの悩ましい問題で、北村は立ち止まることなく前進し、両方を得てしまった。
著者が北村に「ヤリスは売れていますね」と言ったところ、「売っている、と言って欲しい」と切り返された。
イタリアトヨタ170人の社員のうち、日本人は北村を含めわずか4人。このローカライズも成功の秘密のように思う。

今春、日本ではトヨタ自動車が純利益1兆円を上げたことがニュースになった。TV番組で張富士夫社長はこれに対し淡泊にコメントしていたのが印象的だった。純利益1兆円は単独ではなく連結決算での成果で、海外子会社の好調が貢献していると語った。
トヨタと言えば「カンバン方式」や「改善」といった製造ラインでの経営努力が注目されるが、イタリアトヨタは純然たる販売会社である。良いものを作っていれば売れる時代は過ぎ、売る工夫が重要になってきている中、イタリアトヨタの販売成果は、次世代トヨタの攻める強さを垣間見たようだった。

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