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2004.06.27

ダニエル・ピンク著「フリーエージェント社会の到来」

副題「『雇われない生き方』は何を変えるか」
あくまでもこれはアメリカ合衆国での話。原題も"Free Agent Nation"で、アメリカ以外の国には言及していない。
それでも非常に興味深く面白い良著だった。多くの取材による事例をドキュメンタリー風に散りばめ、それでいて論旨は理路整然と章立てて組まれている。
まずプロローグから読み手の関心を惹きつける。
「もっと違う種類の仕事を探したほうがいいと気づいたのは、もう少しのところでアメリカ合衆国副大統領にゲロをひっかけそうになったのがきっかけだったと思う。」と書き出している。
著者は1964年生まれ、クリントン政権下でホワイトハウスに入り、ゴア副大統領の主席スピーチライターを務めた。このゲロ事件の3週間後にホワイトハウスを辞め、自身フリーエージェントになった。
この本に好感を持った理由は、何より偏りのない公正な記述だ。手放しのフリーエージェント礼賛ではない。素晴らしさと同等に、問題点や課題も取り上げている。その上で冷静に、オーガニゼーション・マンから、フリーエージェントへの社会的変化を観察し、報告している。
本著ではフリーエージェントを広義に置き、フリーランス、臨時社員、ミニ起業家の3つのタイプに大別している。
フリーランスはフリーエージェントの典型で、その起源は傭兵だと書いている。その昔フリー・ランス(自由な槍)は、「報酬が納得できて、戦いに意義を認めることができれば、どの君主の旗の下でも戦った」。
臨時社員は、日本でいうならば、期間限定の契約社員や、嘱託、派遣社員など、所謂正社員以外が当てはまる。本著では「テンプ・スレーブ(臨時奴隷)」とまで言われている実態も報告している。
ミニ起業家は、従業員数人の企業を指し、ビル・ゲイツ氏やマイケル・デル氏のような起業家は含まれない。
この3つのタイプを合わせたフリーエージェント人口は3,300万人で、アメリカ労働人口の4分の1になるそうだ。但し著者自身も指摘しているとおり、逆に考えれば4分の3は何らかの組織に属したオーガニゼーション・マンなのだ。しかし社会の4分の1という比重は無視できない。

さて読了後、日本ではどうだろうかと考えた。
まず日本人はどうも寂しがり屋が多いような気がする。すなわち組織や集団が実は好きなのではなかろうか。電話でも「○○の誰々」なのだ。名前だけ名乗っても、「失礼ですがどちらの××さまですか?」だ。組織がビジネスの前提になっている。
確かに昨今、起業の風潮はあるが、それも会社を興して人を雇うという形態であって、結局は新たに組織を創ろうとしている。
また世に言うフリーターも、ポジティブなフリーエージェントには、到底思えない。両親と同居し食住の不安がない就職浪人だ。これも結局はアルバイトという身分で組織に屈している。
フリーランスの本質は、普段は一匹狼で、必要に応じてプロジェクト毎に、他の狼たちと共同戦線を張るというものだ。日本では稀だ。格好いい話だが、未だフィクションの域を脱しない。

ともかくも、時間をおいて再読しようと思う良著だった。

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