« スティーブン・ジョンソン著・山形浩生訳「創発」 | Main | Vernon Reid & Masque "Known Unknown" »

2004.06.13

矢作俊彦著「ららら科學の子」

楽しみに買ったものの、ずっと積んだままだった。それを先日やっと読み始め、それから取り憑かれたように読み耽り、頁が減るのを惜しむながら読み終えた。
ノスタルジックでセンチメンタルな小説だ。山深い中国の寒村に国外逃亡していた主人公が30年振りに東京に戻る。浦島太郎の東京散歩だ。
東京はまるで現実味のない未来都市のようだ。朝から牛丼屋でビールを飲む女子高生。携帯電話、消費税。コンビニ、ドラッグストア。渋谷、お台場。それらが淡々とスケッチされている。
結末は呆気なく爽やかだった。不思議と後味が言い。腹八分目の読了感だ。
矢作の作品に貫かれているのは、失う事へのこだわりだ。此処ではない何処かへ旅立ちなのかもしれない。失ったのではなく、消えていっただけなのかもしれない。夜が明け、空から星が消えるように、それは切ないのに安らかだ。
初期の作品に見られた、結論を求める姿勢はすっかり薄らいだ。その分ずっと見晴らしが良くなった。人生は不可逆で未来はいくつもある。
古くからの読者である自分にとって、矢作が作中「メルツェデス」をしきりに「ベンツ」と書いていたのが妙に気になった。終わりに近い頃、主人公にBMWを「ベーエムヴェー」と言わせ安堵の苦笑を得た。

|

« スティーブン・ジョンソン著・山形浩生訳「創発」 | Main | Vernon Reid & Masque "Known Unknown" »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/7525/762357

Listed below are links to weblogs that reference 矢作俊彦著「ららら科學の子」:

» 第17回三島由紀夫賞に矢作俊彦 [BARIの毎日?]
 発表されました第17回三島由紀夫賞。矢作俊彦の「ららら科學の子」。  大好きな [Read More]

Tracked on 2004.06.13 at 07:06 PM

« スティーブン・ジョンソン著・山形浩生訳「創発」 | Main | Vernon Reid & Masque "Known Unknown" »