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2004.06.27

"An Evening With John Petrucci & Jordan Rudess"

aneveningwithjj.jpgDream TheaterのギタリストJohn PetrucciとキーボーディストJordan Rudessによる2000年6月10日のライブ。Petrucciはエレクトリックとアコースティックのギターを使い分け、Rudessはピアノに徹している(ように聞こえる、もしかしたら電気的に音を作っているのかも)。
二人だけによるステージは、まるでJohn McLaughlinとChick Coreaのようで、自由な掛け合いとリリシズムが楽しめる。Dream Theaterからリズム隊が抜けると、こうも全く違う音楽になるのかと感心した。

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ダニエル・ピンク著「フリーエージェント社会の到来」

副題「『雇われない生き方』は何を変えるか」
あくまでもこれはアメリカ合衆国での話。原題も"Free Agent Nation"で、アメリカ以外の国には言及していない。
それでも非常に興味深く面白い良著だった。多くの取材による事例をドキュメンタリー風に散りばめ、それでいて論旨は理路整然と章立てて組まれている。
まずプロローグから読み手の関心を惹きつける。
「もっと違う種類の仕事を探したほうがいいと気づいたのは、もう少しのところでアメリカ合衆国副大統領にゲロをひっかけそうになったのがきっかけだったと思う。」と書き出している。
著者は1964年生まれ、クリントン政権下でホワイトハウスに入り、ゴア副大統領の主席スピーチライターを務めた。このゲロ事件の3週間後にホワイトハウスを辞め、自身フリーエージェントになった。
この本に好感を持った理由は、何より偏りのない公正な記述だ。手放しのフリーエージェント礼賛ではない。素晴らしさと同等に、問題点や課題も取り上げている。その上で冷静に、オーガニゼーション・マンから、フリーエージェントへの社会的変化を観察し、報告している。
本著ではフリーエージェントを広義に置き、フリーランス、臨時社員、ミニ起業家の3つのタイプに大別している。
フリーランスはフリーエージェントの典型で、その起源は傭兵だと書いている。その昔フリー・ランス(自由な槍)は、「報酬が納得できて、戦いに意義を認めることができれば、どの君主の旗の下でも戦った」。
臨時社員は、日本でいうならば、期間限定の契約社員や、嘱託、派遣社員など、所謂正社員以外が当てはまる。本著では「テンプ・スレーブ(臨時奴隷)」とまで言われている実態も報告している。
ミニ起業家は、従業員数人の企業を指し、ビル・ゲイツ氏やマイケル・デル氏のような起業家は含まれない。
この3つのタイプを合わせたフリーエージェント人口は3,300万人で、アメリカ労働人口の4分の1になるそうだ。但し著者自身も指摘しているとおり、逆に考えれば4分の3は何らかの組織に属したオーガニゼーション・マンなのだ。しかし社会の4分の1という比重は無視できない。

さて読了後、日本ではどうだろうかと考えた。
まず日本人はどうも寂しがり屋が多いような気がする。すなわち組織や集団が実は好きなのではなかろうか。電話でも「○○の誰々」なのだ。名前だけ名乗っても、「失礼ですがどちらの××さまですか?」だ。組織がビジネスの前提になっている。
確かに昨今、起業の風潮はあるが、それも会社を興して人を雇うという形態であって、結局は新たに組織を創ろうとしている。
また世に言うフリーターも、ポジティブなフリーエージェントには、到底思えない。両親と同居し食住の不安がない就職浪人だ。これも結局はアルバイトという身分で組織に屈している。
フリーランスの本質は、普段は一匹狼で、必要に応じてプロジェクト毎に、他の狼たちと共同戦線を張るというものだ。日本では稀だ。格好いい話だが、未だフィクションの域を脱しない。

ともかくも、時間をおいて再読しようと思う良著だった。

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2004.06.26

Hans Zimmer "The Last Samurai"

DVDで映画を観て、音楽の良さに惹かれ、サントラを買った。
琴や尺八、和太鼓を西洋楽器によるオーケストラに見事に融合させ、壮大なパノラマを展開している。
曲調はロマン派だ。前衛ではない。まるで絶滅する狼の雄叫びのように、力強さと哀愁に満ちている。滅びゆく武士道に相応しい。
音楽を担当したHans Zimmerという名は知らなかった。調べてみると不覚にも大した映画音楽家で、オスカーやグラミーも獲っている。手掛けた作品リストを眺めると、「グラディエーター」や「ブラックホーク・ダウン」といったリドリー・スコットの作品から、「ライオン・キング」といったディズニーのアニメまで幅広い。
ドイツ人らしく、ハリウッド映画をその音楽で高尚な芸術作品に引き上げているようだ。そもそも映画はストーリーが陳腐でも、映像と音楽が良ければ、ある程度まで引き締まるものだから。
映画音楽というジャンルは、オーケストレーションの楽譜が書ける作曲家にとって残されたフィールドなのかもしれない。

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2004.06.20

Miroslav Vitous "Universal Syncopations"

vitous.jpg面子が凄かったのと、ECMだったので即買い。
プロデュースは勿論ECMのオーナーでもあるManfred KleisとVitous自身。レコーディングしたスタジオは、ECMのNo.1音響エンジニアJan Erik KongshaugがオーナーをしているOsloのRainbow Studios。完璧だ。
あらためて言うまでもなく、ECMは非常にストイックなレコード会社だと思う。ドイツの工業製品のような質実剛健さは、音だけでなく、ジャケットの写真やフォントにまで表れている。ビジネスのスタイルも他のレコード会社と比べると特異な存在だ。ECMはアーティスト契約は一切しない。つまりアルバム1枚ごとにしか契約しない。一作入魂とでもいう姿勢は、芸術を生業とする者全ての鏡だ。

Chick Corea : piano
John McLaughlin : guitar
Jack DeJohnette : drums
Jan Garbarek : soprano and tenor saxophones
Miroslav Vitous : double-bass

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Vernon Reid & Masque "Known Unknown"

KnownUnknown.jpgLiving ColourのギタリストVernon Reidがソロ・プロジェクトでアルバムを出した。Living Colourよりはずっと軽快な音楽になっている。ディストーション効いたリフは全くなく、全曲インストルメンタルで殊更速弾きに徹している。
愉快なのはLee Morganのヒット曲"Sidewinder"を、3割り増しの速さで疾走している。あの世でLeeも喜んでいるだろう。他にThelonious Monkの"Brilliant Corners"も取り上げており、元はジャズ屋の面目躍如だろう。

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2004.06.13

矢作俊彦著「ららら科學の子」

楽しみに買ったものの、ずっと積んだままだった。それを先日やっと読み始め、それから取り憑かれたように読み耽り、頁が減るのを惜しむながら読み終えた。
ノスタルジックでセンチメンタルな小説だ。山深い中国の寒村に国外逃亡していた主人公が30年振りに東京に戻る。浦島太郎の東京散歩だ。
東京はまるで現実味のない未来都市のようだ。朝から牛丼屋でビールを飲む女子高生。携帯電話、消費税。コンビニ、ドラッグストア。渋谷、お台場。それらが淡々とスケッチされている。
結末は呆気なく爽やかだった。不思議と後味が言い。腹八分目の読了感だ。
矢作の作品に貫かれているのは、失う事へのこだわりだ。此処ではない何処かへ旅立ちなのかもしれない。失ったのではなく、消えていっただけなのかもしれない。夜が明け、空から星が消えるように、それは切ないのに安らかだ。
初期の作品に見られた、結論を求める姿勢はすっかり薄らいだ。その分ずっと見晴らしが良くなった。人生は不可逆で未来はいくつもある。
古くからの読者である自分にとって、矢作が作中「メルツェデス」をしきりに「ベンツ」と書いていたのが妙に気になった。終わりに近い頃、主人公にBMWを「ベーエムヴェー」と言わせ安堵の苦笑を得た。

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2004.06.05

スティーブン・ジョンソン著・山形浩生訳「創発」

副題「蟻・脳・都市・ソフトウエアの自己組織化ネットワーク」
原題"Emergence - The Connected Lives of Ants, Brains, Cities, and Software"
はじめのうちは面白く読み進んだが、途中からダレてきた。
要するに、蟻の群れにしても人間の都市にしても、トップダウンではなくボトムアップで成り立っている。「低次のルールから高次の洗練へと向かう動きこそが、創発と呼ばれるものだ」と説いている。各個が全体を把握せずに行動しているのに、結果的に協調性が生じ、秩序が保たれている事例を挙げている。
考え方のひとつとしては面白いが、アリンコの理想郷の話を人間様の世の中には応用できそうにない。蟻のコロニーには、パレスチナ問題も、イラク問題もない。
もちろん著者は蟻を参考にすれば、世の中マルっと治まるとなどは書いていない。しかし読者に、リーダーや王様のいない粘菌に、民主的な秩序の幻覚を与えかねない書きっぷりだ。それに出版社もいくら本を売りたいからって、帯に「ローカルな相互作用から生まれるグローバルな秩序。」 と書くのはどうかと思う。
愉快なことに訳者の山形も、この分散型自律的創発が優れているという無邪気な考えを嫌っている。

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