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2004.05.30

Miles Davis "Sketches of Spain"

spain.jpgMilesのアルバムというより、Gil Evansの作品にMilesがトランペッターとして参加したような作品だ。ただ考えてもみれば、Milesは生涯そのスタイルを変え続け、自身のイメージした世界に常に参加し続けたようなものだ。
さてこのアルバムの素晴らしさは、タイトル通りスペインの色彩豊かなパノラマが音楽によって再現されていることだ。主軸となるメロディーは、ロドリーゴの"アランフェス協奏曲第2楽章"。このメロディーは、Chick Coreaの"Spain"を生み、Jim Hallに"Concierto"を創らせた。
このわずか数小節のメロディーが、これ程までの創作を生んだのは凄いことだと痛感する。

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2004.05.27

三波春夫著「熱血!日本偉人伝」

今は亡き国民的歌手が、高田屋嘉兵衛、大石内蔵助、勝海舟、平清盛、二宮尊徳、児玉源太郎、織田信長、聖徳太子、スサノオ、卑弥呼ら大好きな歴史上の人物達を取り上げている。流石に浪曲師だっただけあり、語り口が明瞭で読み易かった。
特に聖徳太子の項などでは、なかなかの歴史家振りを発揮し、聖徳太子のブレーンであったとされる秦河勝と、その著としている「先代旧事本紀大成経」に関する論述は大したものだ。
ただ最近は聖徳太子は架空の人物だったという学説もあり、著者も草葉の陰で淋しがっているのだろうか。

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2004.05.23

Deep Purple "made in japan"

MadeInJ.jpgLed ZeppelinとDeep Purpleのどちらが好きか?と問われれば、迷わずZepなのだが、ライブ・アルバムに限っては、第2期Deep Purpleの1972年の"made in japan"に軍配を挙げる。
言うまでもなくZepとPurpleは、1970年代を代表するハードロックバンドの両雄であり、その方向性とスタイルには違いがあり、比較すること自体愚考だが、私感を言えば、Deep Purpleはjazzだ。5人のメンバーそれぞれが、飛び抜けた演奏(歌唱)技術を持ち、順次ソロパフォーマンスを披露する。これはまさにライブという演奏時間の制約を取り払った場でこそ充分に発揮される。事実スタジオ録音盤では退屈な楽曲も、ライブアルバムで聴くと、とてつもないスリルとエネルギーを感じる。この"made in japan"がその好例で、Deep Purpleの数多いアルバムの中で、最高傑作だと断言できる。
1曲目の"Highway Star"の疾走感は、これぞハードロックと言え、2曲目"Child in Time"でのGillanの叫び声は尋常ではない。3曲目"Smoke on the Water"のギターリフは、知らぬ者もないロック史上最も有名なフレーズだ。この3曲で既に、このアルバムの素晴らしさの7割が聞ける。
4曲目以降はインプロビゼーション大会が繰り広げられる。
4曲目"The Mule"ではドラム・ソロをフューチャーし、5曲目"Strange Kind of Woman"ではギターとボーカルの掛け合いをし、6曲目"Lazy"、そして20分を超える7曲目"Space Truckin'"まで、楽曲構成を一度無にして、演奏技術で再構築するというライブならでは取り組みをしている。
このライブアルバムの素晴らしさは、観客へのショーマンシップを排し、壮大なジャム・セッションに立ち会っているような気分になることだ。多分楽器演奏者の同志諸兄はジッとしていられなくなるに違いない。
今回これを書くに当たって、聞き直して発見があった。オルガンが右、ギターが左から聞こえる。おかしいぞ、Ritchieの立ち位置は常に右のはずだ。つまりこれは客席から観た配置の逆で、ステージ上から客席に向かった配置なのだ。なぜ今まで気が付かなかったのだろう。奇妙に思い調べてみたら、これはオリジナル盤だけで、最近売られている盤は修正されているらしい(修正しない方がいいのにね)。
最後に、Led Zeppelinの名誉のために付記するが、Zepのライブ・パフォーマンスはDeep Purpleを遙かに凌ぐ。ただ残念なのは、直径十数センチの金属板には収めきれないのだ。それに成功したのが、このDeep Purpleの"made in japan"なのではないかと思う。

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2004.05.16

Mahler "Symphony No.9"

mahler9.jpgLeonard Bernsteinが1985年にConcertgebowを振った録音を愛聴している。
Mahler好きにとって9番は大きな宝だ。自分にとっても、この2枚組CDを取り出して聴く時は、大袈裟に言えば自分へのご褒美の時だ。部屋の灯りを落とし、心を音楽に捧げてしまう。目を閉じると、ひとつひとつの音が、色彩豊かなマルチトラックのピアノロールで見える。
4つの楽章のうち、第1楽章と第4楽章は圧巻だ。第1楽章は、疲れた身体に熱めのシャワーを浴びせたような気持ちよさだ。全身の力が火照りと共に抜けていく。第4楽章はアダージョ、つまりテンポがゆったりとしている。切なく哀しいメロディーで幕を閉じる。
この大曲は、古今の交響曲の中でも、オーケストラの機能をフルに使った難曲であり、且つ人類が到達する最後の美しさをも感じさせる名曲だと思う。

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2004.05.15

土屋賢二著「ツチヤ学部長の弁明」

benmei.jpg哲学者にしてお茶の水女子大学文教育学部の学部長様による笑える毒舌エッセイ集。特に女性を評したものは卓見、痛快。但しここであまり好評すると、共犯者に見なされる危険が高いので詳しく書かない。
いしいひさいちのマンガも載せられ笑い倍増。

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2004.05.13

空気公団 "約束しよう"

yakusoku.jpg空気公団を知ったのは、2002年に発売されたはっぴいえんどへのトリビュートアルバム"HAPPY END PARADE"での"いらいら"のカバー。一聴してこれはタダモノではないと思い、早速当時の最新ミニアルバム"約束しよう"を購入。やっぱりタダモノではなかった。
楽曲の雰囲気を世間に言わせれば、「なごみ」とか「癒し」とかで片付けられるだろう。確かにボーカルの山崎ゆかりは話すように歌い、カスタネットやマリンバ、鉄琴、オカリナといった優しい音の楽器も多く使われている。
しかし柔らかさの中に骨がある。それはドラムスだ。キャリア20年を誇るベテランバンドであるカーネーションの矢部浩志が参加し、素晴らしいビートを刻んでいる。日本人でこういう太鼓を叩ける人がいるのは、本当に嬉しい。この矢部の気骨あるドラムスが、空気公団の柔らかな世界に見事に融合しているのだ。
わずか5曲のミニアルバムだが、飽きずに聴いている。
ただこの春、空気公団は「融解」と称して、第1期の活動を終了しているのが惜しい。そう言えば、山下達郎もどこかで空気公団を評して「どの曲も素晴らしい」と言っていたっけ。

ちなみに矢部氏は煙突好きで、デジカメ写真のホームページを持っている。

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2004.05.09

"Lionel Richie"

Lionel.jpgJM氏のblogでMotownについて書かれていたのを読んで、自分にはあまり縁のないレーベルだなと思いつつ、果てさてMotownでよく聞いたものなどあったかなとCD棚を調べたら、ありました。
これこれ。Lionel Richieのタイトルもそのまんま"Lionel Richie"。1982年のヒット・アルバムで、当時シングルカットされた曲も軒並みヒットしましたね。アルバムは、アップテンポの曲とバラードを交互に配し、特にバラードはいずれも絶品の出来。
リアルタイムの当時は、自分自身丁度Rock!なお年頃で、友人に隠れて愛聴していた想い出があります。ブラコンのバラードを聴くなど、音楽仲間からは軟弱だと被差別の対象でした。でもみんな隠れて松田聖子を聴いていたんだよね。
ともあれMotownの印象は、良くも悪しくも商業主義的だと当時も今も感じます。万民に広く受け入れられようという工夫と努力が感じられます。若い頃はそれが嫌でしたが、今はそれもアリだねと素直に楽しめます。
偶数曲番のバラードだけでも、十二分に名盤といえる一枚ではないでしょうか。

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2004.05.08

Bach作曲 Mozart編曲 "Five four-part Fugues KV405"

hagen.jpgBachが作曲した「平均律クラヴィーア曲集第2巻」の中の「5つの四声フーガ」を、Mozartが弦楽四重奏に編曲したもの。Bachの原曲はBWV番号871,876,878,877,874の5曲で、それをMozartがケッヘル番号405として1作品に仕上げた。
MozartはBachの5つ原曲から各前半のプレリュードを排し、後半の四声フーガだけを忠実に弦楽の四重奏に分配し、一切の遊びを加えていない。つまり天衣無縫なMozartが、厳格なBachに最大限の敬意を表し、膝を屈しているようにも見える。
演奏時間わずか10分程度の小品だが、対位法による主題と応答が四丁の弦楽器によって行われ、その整然とした秩序ある美しさに息を呑む作品に仕上がっている。
今回別にピアノによる原曲を聴き直したが、荘厳で冷徹な印象になっており、柔らかな美しさが感じられない。これを弦楽四重奏に編曲したことで、柔らかな弦の音色が楽曲本来の美しさを引き出すことに成功している。作曲家としてだけではなく、プロデューサーとしてのMozartの着眼点に敬服する。
演奏はHagen Quartettの2000年11月の録音盤(写真 Beethoven弦楽四重奏曲第13番も併録)。
原曲の再確認には、Sviatoslav Richterのピアノ演奏による1973年7月の録音盤を用いた。

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2004.05.05

The Gipsy Kings "roots"

roots.jpg
我が心の故郷(?)Gipsy Kingsが前作から2年半振り、8枚目のアルバムをリリース。と書いておきながら、このグループには何年振りとか、何枚目とかは全然意味が為さない。なぜなら、どのアルバムもGipsy Kingsだからだ。つまり「北島三郎は何がどうなろうと北島三郎だ」と例えるのに等しい。(←???)
但し今回のアルバムのタイトルを、敢えて"roots"としているのが嬉しいじゃないですか。実は一時期Gipsy Kingsは(カネ欲しさにか)かなりポップな、風呂上がりのキャバレー・バンドみたいに成り下がりかけていた。なんとレゲエ風の曲まで演奏していたのだ。嘆かわしい。
ところが今回は"roots"だ。原点回帰だ。電気楽器は一切なし。無農薬、産地直送のようなものだ。泥と埃と、汗と泪だ。更に暗く深く思えば、貧困と流浪と被差別だ。
歳のせいか、この手の音楽には泣けます。まぁ、サイレンに遠吠えする犬のようなものだけど。
ジャケ写もいいねぇ。

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2004.05.03

黒木瞳著「夫の浮わ気」

uwaki.JPG
女優のエッセイ。夫婦の些細なエピソード。虚実はどうも怪しいが、空想による短編小説として割り切って読む。それはまるで、嫉妬深くワガママな女優「クロキヒトミ」と、穏和なサラリーマンの夫「トシオ」との、一幕ものの二人芝居だ。
妻は夫を観察して楽しむ。イタズラ電話に浮気を疑い脅したり、夫の癖を発見してはからかい喜ぶ。著者の職業によるのか、人物観察と心理分析は大したものだ。それを軽快な文体で綴っており、適度なエスプリと共に、良質なエッセイに仕上がっている。


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2004.05.02

保阪正康著「幻の終戦」

副題にある「もしミッドウェー海戦で戦争をやめていたら」という仮説をテーマにした論説書。
前半第一部はミッドウェー敗戦までの史実を充分に分析し、後半第二部では大胆にもその後の終戦工作を描いたフィクションとなっている。
第一部の史実分析で、なかなかの卓見だと感心したこととして、1942年4月18日の米海軍第17爆撃連隊ドウリットル中佐による本土爆撃を取り上げている。このB25双発軽爆撃機16機での爆撃は真珠湾攻撃以来、優勢を誇っていた日本にとって、突然首都圏を狙われたショッキングな事件であった。被害は焼夷弾をわずかに落とされたに過ぎない軽傷だったが、東条英機首相をはじめ山本五十六連合艦隊司令長官をも動揺させた。短期決戦・早期講和を画策していた山本五十六は、1942年10月に予定していた再度のハワイ攻撃を成し遂げての戦況優位を、講和への必要条件と思案していた。そのハワイ再攻撃の前哨戦として、ミッドウェー作戦を位置付けていた。つまりこのドウリットル爆撃が、ミッドウェー作戦実行の引き金になったと分析している。
整理すると、1941年12月8日真珠湾攻撃、翌1942年2月15日シンガポール攻略、同年4月18日ドウリットル爆撃、同年6月5日ミッドウェー敗戦となる。つまり開戦後約半年で日本の優勢は崩れ、敗戦への坂道を転げ落ちることになる。山本五十六が描いた短期決戦・早期講和の構想も崩れ去った。
そして第二部からは、フィクションがスタートする。1942年8月25日、吉田茂が岳父であり天皇の信任が厚い牧野伸顕を動かし、第4次近衛内閣を誕生させる。吉田自身も副首相として入閣。陸相に宇垣一成、海相に米内光政の大物を配し、山本五十六を艦隊から呼び戻し軍令部次長に就けている。東条内閣から一転、講和を目的とした夢のような組閣をしている。
ここから先はネタバレになるので記さないが、巷に溢れる幼稚な戦記シミュレーション小説とは異なり、政治的駆け引きと世界戦略や歴史観が丁寧に書き込まれた著作であることだけ明記しておきたい。

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