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2004.03.28

早坂茂三著「駕籠に乗る人・担ぐ人」

副題「自民党裏面史に学ぶ」。著者は新聞記者から田中角栄の政務秘書に転身した角栄の側近中の側近。
角栄を中心に同時代の自民党政治家達のエピソードが、なかなかの名文で綴られている。特に角栄の知らなかった一面を面白く読んだ。
例えば、角栄は長男を3歳で亡くしており、同い年の小沢一郎を我が子のように可愛がった。
また角栄は若い政治家に、選挙への心構えとして、戸別訪問三万軒、辻説法五万回を力説した。
更に角栄が土建業から身を起こしたことは知っていたが、一級建築士であったとは知らなかった。
角栄は勉強家で、事実や数字を重視した。緻密で勤勉に加え、大胆だった。

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岩井克人著「会社はこれからどうなるのか」

タイトルは軽いが、なかなかの名著で、小林秀雄賞を受賞している。著者は東京大学経済学部長。
前半では、会社、企業、法人について、丁寧に解き明かしている。その上で、会社は株主のものであるというアメリカ型の株主主権論を否定している。
株主とは株式の所有者である。株式とは会社に対して持つ権利のこと。その権利には、総会議決権、利益配当請求権、残余財産請求権などがある。つまり株主はこれらの権利の所有者に過ぎない。会社資産の所有者は、法人である会社であって、株主ではない。
本書後半では資本主義についても明瞭に説いている。
「資本主義とは、利潤を永続的に追求していく経済活動」であり、時代と共に商業資本主義、産業資本主義、そしてポスト産業資本主義へと変遷を経ているが、「利潤は差異性からしか生まれない」ことは一貫している。
商業資本主義では、ある地点で安いモノを別の地点で高く売るという、市場間での価格の差異から利潤を生み出している。産業資本主義では、産業革命で上昇した労働生産性と、農村の産業予備軍によって抑えられた実質賃金率との差異から利潤を生み出している。
「ポスト産業資本主義とは、差異性を意識的に創り出すことによって利潤を生み出していく資本主義の形態」としており、ここでの利潤創出方法の究極は「情報の商品化」であると説いている。情報とは差異性そのものであり、同一の情報には情報価値がない。「情報の商品化」とは「差異性の商品化」と言い換えられる。
このポスト産業資本主義では、カネで買える有形資産よりも、ヒトの自由意思に支配される知識資産の方が、重きを為すようになる。つまりカネの重要性が下がる。従って出資者でもある株主の役割も下がる。株主は知識資産を支配することは出来ない。株主主権論はここでも否定されている。
「企業組織とは、それに参加する経営者の企画力や技術者の開発力や労働者のノウハウといった、組織特殊的な人的資産のネットワークにほかならない」と結んでいる。
要約すると上述のように概念的になって不明瞭だが、本書ではたっぷりと紙幅を取って、中学校の社会科教諭のように丁寧に具体例を挙げて語り説いており、とても好感を持った。
また著者の真摯な態度が次に一文に現れ、非常に感銘を受けた。
「経済学という学問がほかの社会科学よりも優越しているところがあるとしたら、それは、経済学が合理性の論理を徹底的に推し進めることによって、みずからの学問としての限界を明らかにすることができるということにある」

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2004.03.27

Eric Clapton "Me and Mr.Johnson"

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Sleepy's blogでSleepyさんが書いているとおり、ジャケットに騙された。
Claptonがギター1本で濃厚なbluesを演っているのかと期待していたら、すっかり濾過されて聞き易い仕上がりになっていた。
これではblues好きには物足りないし、bluesに馴染みのない人には面白くも何ともないのではないだろうか。
“悪魔に魂を売った男”の本領が発揮されていない中途半端なアルバムだ。
まぁそれでも、飲み屋でBGMに流れると、グラスを置いて耳を傾けてしまうかもしれない。何度期待を裏切られても、無視は出来ない。Claptonは別格だから。

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2004.03.21

石ノ森章太郎作画「北斎」

葛飾北斎の生涯を描いた漫画。北斎好きだけに書店で思わず手に取った。
北斎の生涯は謎が多いため、この漫画はフィクションだが、それでも北斎の驚異的なバイタリティーが伝わってくる佳作だ。クレイジーな生き方が良く描かれている。「画狂」という称号が似合う。
北斎については以前から、「江戸時代の浮世絵師」という枠だけでは収まらない日本史上最高の芸術家だと崇拝している。
そういえば、1981年に新藤兼人監督、緒方拳主演で映画化された「北斎漫画」も面白かったな。樋口可南子vsタコは圧巻だった。

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2004.03.20

Pat Metheny "TRIO→LIVE"

PatTrioLive.gif
現役のジャズ・ギタリストで、人気と実力を兼ね備えた第一人者と言えば、Pat Methenyに異論は少ないだろう。
アンビエントなリゾート音楽から、バリバリの前衛フリージャズまで幅広くこなすPatが、全開で弾きまくっているのが、このトリオでのライブ盤。
トリオ構成は、音を出すのが3人だけなので、1人当たりの役割が大きい。特にギター、ベース、ドラムスとなると、必然的にギターが主役になり、他のアルバムに比べてPatの出す音が遙かに多い。特にライブ盤となると、即興演奏でPatの腕前を存分に味わえる。Patに肉薄するには好都合な1枚。
19分53秒にもなった"Question And Answer"では、シームレスにギター・シンセサイザーをオンにして延々とソロを弾き、聞き手を酔わせる。

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Mendelssohn "Symphony No.3 Scottish"

Mendelssohnは、もっと高く評価されるべきだと思う。演奏されるのはヴァイオリン協奏曲ばかり。あとはせいぜい"真夏の夜の夢"ぐらいだろうか。2曲あるピアノ協奏曲など今では滅多に耳にすることはない。
Mendelssohnの作品中でも、最も聴き応えあるのがこの交響曲3番"スコットランド"だと思う。豊穣なロマン派の香りが高く、BeethovenとBrahmsの中間に置ける名曲だ。
第1楽章アンダンテで深く重厚に幕を開け、途中からアレグロで歩き始める。短い第2楽章では暗雲が晴れ、束の間の夏空を楽しむかのように快走する。第3楽章では情感豊かなメロディーを聴かせ、第4楽章では再びアレグロでリズミカルに歩き出し、最後はたっぷりとテンポを落とし締めくくる。
1960年に巨匠Otto Klempererが手兵Philharmonia Orchestraを指揮したスタジオ録音盤。無愛想でスマートさには欠けるが、じっくりと腰を据えた正統派の演奏。

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R25 2004.3.18 No.3

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すっかり定期購読してしまっているR25だが、早くも新鮮味は薄れつつあり、期間限定の無料配布が終了する頃には、手に取ることもなくなりそうだ。
但し、本号巻頭のPHOTO REVIEWには目が留まった。陽光を浴びる山腹に、謎の巨大なコンクリート柱が林立する写真。
読むとそれは、建設中の第二東名高速道路の橋脚群だった。「無駄な道路は造らない」に反対の余地はないが、それではこの日本列島に、今後新たに必要な道路などあるのだろうか。そもそもあと数十年もすれば、この国の人口は減少を始め、更には高齢化でドライバー人口も益々減るはずだ。今以上にモータリゼーションが進むとは到底思えない。
民営化される道路公団に期待するのは、道路を造ることではなく、むしろ使わなくなった道路を元通りの野や山の姿に戻すことだ。
見開き2ページに跨ぐこの写真は、多くの読者に道路問題を考えさせるのではなかろうか。

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2004.03.18

高崎晃"氣"

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1994年のソロアルバム。日本のギタリスト達の作品群には稀に見る、スピリチュアルな名盤。商業的な迎合を完全に排除した、深い自己世界への探求が痛切に感じる。最早この境地に達すると、演奏技術や楽曲構成への関心が意味をなさない。
本作は高崎の長いキャリアの中でも、LOUDNESSや他のソロ作品とは一線を画し特に優れ、高崎自身、今以て自信作と語っている。

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2004.03.14

松本孝弘"Thousand Wave"

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言わずと知れたB'zのギタリスト松本氏による、1988年5月B'z直前のインストルメンタル・アルバム。ドラムは全曲LOUDNESSの樋口宗孝。
今日散歩の途中、リサイクル・ショップで発見し、内容不明のまま取り敢えず購入。調べてみたら上述の通りで、既に廃盤。
そのまま稲葉が歌い出せば、B'zになるほどの出来栄え。変わったところでは、Chick Coreaの"Spain"や、ジャズの定番"Take Five"をハードロック調に演っている。

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日下公人著「もっと頭のいい『生き方』をしろ!」

処世訓→人生訓。
巻頭で「『愛される自分』より『愛した自分』に満足する」ことを掲げ、まずは主体的に生きることを説いている。当たり前のことだが、いくつか例証されると思わず我が身を省みる。
次に自分のアイデンティティーを「かたち」として表現することを勧めている。そのかたちを本著では「作品」になぞらえている。作品を世に出すことで多くの人に揉まれ、作品にも広がりを得て、「独り善がり」にもならずに済む。
次に「とことん考える」ことで、作品の質を高め、人生の深みも増す。
最後に、優先順位を意識することで人生は充実する。優先順位は、目先の利益や効率だけに囚われず勘案せよ。そうすれば「賢い妥協」も出来るようになる。
要約すると上述の通りだが、かなり脱線と寄り道が多いので、気ままに読むと真意を見失いそうになる本。

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2004.03.13

Paco de Lucia "Cositas Buenas"

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仙人Paco先生の新譜。いつもの通りのフラメンコ・ギターだが、流石に円熟味が深みを増し、往年のような気迫で押しまくるスタイルからは遠退いてきた。それでも時折垣間見せる熱いパッセージには痺れる。

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Johnny A. "Get Inside"

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ツボにハマったギターインスト。jazz+blues+laten+mellow。楽曲自体は至ってシンプル。その分ギターが気持ちよく鳴っている。ギター弾きにはたまらない。
川崎の山野楽器で見かけたギブソンのシグネイチャーモデルにも一目惚れ。欲しい。
2004年の2ndアルバム。www.johnnya.comで試聴出来ます。1stもかなり良い。

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2004.03.10

R25 2004.3.4 No.1

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リクルートが先頃プレ創刊として無料配布を開始した週刊誌「R25(アールニジュウゴ)」。写真は明日3月11日配布のプレ創刊第2号。東京、横浜、川崎各地の主要駅にラックを設置し無料配布中。
そのR25プレ創刊第1号を拾い読みして「へぇ」だった小ネタをひとつ。
…日本の軍事費は、空母や核兵器を持つイギリスやフランスより高い。
世界の2001年軍事費ランキングによると、アメリカが3,224億ドルでダントツ1位は当たり前として、2位ロシア(637億ドル)、3位中国(460億円)に次いで、我らがニッポンは堂々395億ドルで4位。銅メダルは逃したものの大したものだ。ベストテン入りはしてるかなと思っていたが、世界4位はちょっとビックリ。
ちなみに5位はイギリス。大英帝国女王陛下の軍隊も、懐具合では憲法上軍隊ではない謎の武装集団「ジエイタイ」の軍門に下るのだ。ブラヴォー・ツー・ゼロが泣くよ。

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2004.03.09

星野之宣作画「クビライ」

歴史コミック。先に紹介した安彦良和作画「アレクサンドロス」の姉妹本。
クビライ・カアンは、チンギス・カンの孫にして、モンゴル帝国第5代皇帝。当時モンゴル帝国は王家諸家の自治国家の集合体で、その中枢国家が元帝国。「元寇」の「元」だ。クビライはその元帝国の初代国王でもあった。しかしその地位も兄弟骨肉の争いの末に、40代半ばにして手にしている。本書ではそれを「チンギス・カンを信長に例えれば、クビライは家康」と書いている。
クビライの治世は、勇猛な遊牧民のイメージとは裏腹に、新首都建設や人工湖、大運河といった土木工事、税制の簡素化による貿易や流通の拡大、紙幣取引、天体観測など、大規模且つ多岐に渡った。クビライはまた、マルコ・ポーロにも謁見し彼を気に入り、17年間も引き留めた。
しかしなぜ、この繁栄を謳歌した大帝国が、取るに足らない東の小さな島国を二度までも攻めたのか。本書でその目的は大量移民にあったと描かれている。先に占領支配した南宋国の軍人のうち、老兵や病兵の処分先として日本を選んだに過ぎないと。
1281年の第2次日本遠征(元寇)では、4,500の船艇で非武装移民を含む14万人を送り込んだが、日本側の必死の水際作戦で強行上陸に失敗した船艇が、沿岸に立ち往生したまま暴風を受け撤退してしまう。「しかしこれで、日本人もようやく、海の向こうには強大な力と意志が存在していることを、肌身に感じたのだ。」
他にも首都大都の構造が鎌倉や平泉に似ていることから、クビライは祖父から何らかの影響を受けたのではないかとも書いている。つまり祖父チンギス・カン=義経という仮説にも触れている。
本書全体の印象は、淡泊で薄味だ。その分、更なる興味を誘う仕掛けにもなっている。

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2004.03.07

鈴木ルミ子著「エルメスを甘く見ると痛い目にあう」

エルメスにまつわるエッセイ集。エルメスの歴史や商品ラインナップの解説がなく、単なるエルメス好きの心構えに終始してしまっているのが残念。
ハンカチが6〜8千円。ポケットチーフ1万円。スカーフ4万円。財布15万円。ケリーやバーキンといったバッグに至っては50万円。ん〜ん…、本書は男性諸氏へのハザードマップとして有益だ。
それにつけても、この国ではこれほど高価なものが、庶民層にも結構売れているのだから驚きだ。購入した女性達はグレース・ケリーやジェーン・バーキンになった気分なのだろうか???(そんな訳ないか)
まぁ、夢を買うのは本人の自由だとしても、並みのOLの財力では踏み込めない世界のはずだ。とは言え、高級ブランド好きの執念はもはや異常だ。会社の金を横領したり、夜のバイトに励んだりするのかもしれないなぁ。
エルメスをお持ちの若い女性諸君、男達はそういう目で見ているかも知れないので、ご注意を。

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ZZ Top "Mescalero"

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現存するギター、ベース、ドラムスの3ピース編成のロック・バンドでは、最高峰ではないだろうかと勝手に思っている。とにかく聞いていて楽しい。声も枯れていて良いし、ギターも唸りながら走っている。あのルックスで、ご婦人方を遠ざけているところがまた、男心を惹きつけるぜぃ。
特に昨年出したこのアルバムは、ZZ Topの本領発揮盤で、1枚に16曲(と隠しトラック+1曲)を詰め込んでいて、たっぷり楽しめる。晴れた日曜日に聞くと、コロナビールをラッパ飲みしたくなりまっせ。

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Beethoven "Piano Concerto No.4"

確かに5番「皇帝」は凄い曲だが、好みから言えばこの4番だ。
曲の出だしが慎ましい。ロココの香りを残しながらも、力強さも見える第1楽章。悲劇的で重厚な伴奏に、繊細なピアノが対照的な第2楽章。前楽章から途切れなく快走を始め、颯爽としたカデンツァでゴールテープを切る第3楽章。特に5分程度と短い第2楽章が秀逸だ。
全体の表現は小粒だが、「皇帝」に繋がるアイデアに満ちている面白い楽曲だ。
Wilhelm Backhausのピアノ独奏、Hans Schmidt-Isserstedt指揮、Vienna Philharmonic Orchestraによる1958年の録音盤にて。

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安彦良和作画「アレクサンドロス」

歴史コミック。壮大な東方遠征を果たした英雄の生涯。紀元前356年に生まれ、紀元前323年に遠征からの帰国後、33歳の若さでバビロンで病死している。
グローバリズムの是非が問われている現在、異文化との遭遇や衝突の原型を観た思いだ。しかし本書で主人公アレクサンドロスの遠征の意図は、悪意のない冒険心だと描かれている。確かに大王を自称し多くの文明を征服したが、それはあくまでも子供心に夢見た東の地の果てを目指しただけだったと。
我々人類はこの殺戮と征服という悲劇と引き替えに、文明の交配による進歩を得た。それは否定出来ない事実だ。しかしこれは紀元前の話だ。21世紀の現在において、経済や商業、ましてや軍事力による異文化の支配や抑制からは、得る物は極めて少なく、悲劇は多いと思う。

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2004.03.03

坂本龍一"CHASM"

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このアルバムをポップ・アルバムとは定義出来ない。
1曲目"undercooled"で間口を広げ、多くの聞き手を受け入れるが、2曲目"coro"ではノイズでリズムだけを刻み、8割から9割の聞き手を遠ざける。ところが3曲目"War & Peace"で再び緊張を解いてはみるが、4曲目"CHASM"でまたしても多くの聞き手を悩ませる。アルバムを通して、この意地悪な楽曲配列に終始する。
個人的には久しぶりに面白いアルバムだと楽しんで聞いている。この多様な楽曲構成から、不思議にも秩序と整合性が感じられる。アルバムのタイトル"CHASM「隔たり、深い割れ目、隙間」"への皮肉ではない。統一感はむしろ作為的で、多様性こそが自然だと思うからだ。
繰り返すが、このアルバムは決してポピュラー音楽ではない。が、しかし、多くの聞き手を引き込んでしまう、教授の会心作ではなかろうか。

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