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2004.02.29

矢作俊彦著「ライオンを夢見る」

表題作はヘミングウェイの足跡を追った紀行文。評伝としても読める。写真もよし。
併載している短編小説「Most Valuable Player」でも、ハバナ郊外を舞台に、ヘミングウェイと地元の子供達との、野球を通じた交流が描かれている。
もう1作併載されている「コンクリート謝肉祭」では、著者得意の毒舌悪態が炸裂している。実に痛快で心地良い。
それにつけても、ヘミングウェイは男の憧れだ。ヘミングウェイにとって文筆業は喰っていく手段であり、人生の目的ではなかったように思う。銃を愛し、海を愛し、闘牛と野球を愛し、酒と女を愛した。スペイン内戦も、ノルマンディー上陸作戦も、パリ解放も、自ら望んで出かけていった。ついには愛艇を駆ってナチのUボート狩りまで楽しんだらしいじゃないか。人生こそが冒険活劇なのだ。まるでフリーランスのジェームス・ボンドだ。羨ましい。都知事になるより、ずっと羨ましい。

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2004.02.28

森岡正博著「意識通信」

1992年、インターネット以前に書かれたコミュニケーション論の名著。
本書に例示されるパソコン通信やパーティーライン等は既に絶滅したため、現在の読者には事例としての興味を惹かないが、これらを携帯メールや2ちゃんねる、weblog等に置き換えると、論旨は説得力を持って迫真してくる。
匿名性、断片人格、自己演出。これらキーワードに対する考察は今も的を射ている。乱暴に要約すれば、電話やチャットといった制限メディアによって匿名のコミュニケーションが成り立ち、その際人格のある一面だけが表出されたり、時には誇張、上積み、差し替えた人格が表出される。
読了後の感想として、これらは病理として捉えられず、むしろ現代人の心の捌け口として有効に機能しているように思えてならない。
著者も本書でこれら考察を前提に、意識交流モデルを提案している。しかしこれは残念ながらあまりに抽象的で具現化には遠い。

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2004.02.22

Greg Howe / Victor Wooten / Dennis Chambers "Extraction"

extraction.jpg
ヘヴィ・フュージョンとでもいうのか。とにかく売れっ子ドラマーであるDennis Chambersの最新作。Dennis好みのファンクっぽいグルーヴに、Greg Howeの技巧的なギターが疾走している。
単発のプロジェクトではなく、バンドとして次作とライブを期待してしまうほど良い出来だ。テクニカルなフュージョン好きには、気持ちの良い1枚。

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2004.02.21

水上勉・不破哲三共著「一滴の力水」

作家と政治家の対談集。
同病の心筋梗塞が縁で交友を結んだ話に始まり、お互いの生い立ちや、それぞれの山荘の暮らしぶりが話の中心となっているが、原子力発電所や沖縄の米軍基地の事も少々語り合っている。
この本で、不破氏が子供の頃SF作家を夢見ていたことを知り、少し親近感を持った。「日本共産党の」と肩書きが附くだけで今まで無意識に敬遠していた人物の一人だった。
また、水上氏の故郷である若狭に日本の原子力発電所の三割が集中し、その地域的密集度は世界的にも稀であるとは知らなかった。
但し、多少イデオロギーめいた話になると、すっかり醒めてしまった。

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2004.02.15

秋元康著「人生には好きなことしかやる時間がない」

エッセイ集。その中の「なんてったってリーダー」にて、「人の悪口が言える」ことがリーダーの条件のひとつとされている。著者曰く「陰口ではなく、堂々と自分の敵に宣戦布告できるからこそ、リーダーなのである」と。
ナルホドネと感心していたら、文末で「感心している人は、リーダーになれない」と結ばれている。「なぜなら、リーダーとは、いつの間にか、リーダーとして担がれている人のことだからである。」ご尤も。参りました。

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2004.02.14

Barney Kessel "On Fire"

onFire.jpg
ジャズ・ギター愛好家は必聴。
1965年のライブ盤。ギター、ベース、ドラムスのトリオ。
非常に充実したライブで、これぞジャズ・ギター演奏の華。特に2曲目の"Just in Time"と4曲目の"Recado Bossa Nova"のドライブ感は凄い。またスローな曲の後ろで微かに聞こえる食器の音もアットホームで心地良い。
長く珍盤で入手困難だったが、日本でリマスタリングされて2002年にCDとして再発された。

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2004.02.12

綿矢りさ著「インストール」

risa.jpg
著者(写真)の処女作。
捨てたパソコンが縁で知り合った不登校の女子高生「私」と、同じマンションに住むしっかり者の小学生「かずよし」が、押し入れの中で風俗チャットのアルバイトを始める。
起承転結もあり短く簡潔だが、その分淡泊で後味も軽い。
上戸彩を主演に映画化されるそうだ。

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2004.02.11

Wishbone Ash "ARGUS"

argus.jpg
EXPANDED EDITON (Remastered & Revisited)
言わずと知れた名盤。ボーナス・トラック(ライブ音源3曲)が聞きたくて今更ながらCDで購入。オリジナル本編より、ボーナス・トラックの出来の良さに感心した。バンドの演奏力が存分に味わえる。特に2本のギターのバランスが巧妙にて流石。

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2004.02.08

海音寺潮五郎著「乱世の英雄」

歴史エッセイ集。ここで紹介された坂本龍馬の語録を読み、龍馬の印象が少し変わった。
そのいくつかとして、「人を殺すことを工夫すべし。刃にはかようにして、毒類にてはかようにしてなどと、工夫すべし。乞食など二三人試みておくべし」、「涙というものは人情を示す色なり。愚人や婦女子には第一にききめあるものなり」等々。
今まで龍馬の印象を司馬遼太郎や武田鉄矢に影響されすぎていたのかもしれない。颯爽としたイメージが強すぎ、ダーティーな面を想像していなかった。
上述の語録に接し、龍馬にマキャベリズムを感じた。考えてもみれば、あの時代にあれだけの大事を為したのだから、純朴な好青年を夢見る方が間違えだったのかもしれない。そう思うと高嶺のヒーローがグッと身近に感じ、新たな好感を持てるようになった。

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2004.02.07

中曽根康弘・梅原猛共著「政治と哲学」

政治家と学者の対論集。お互いの生い立ちに始まって、思想、文化、外交、宗教と幅広い対話がされている。
中でも中曽根氏が披露した運輸大臣時代のエピソードが面白かった。
日ソ航空協定の報告で参内したとき、昭和天皇に司馬遼太郎の「殉死」に書かれた乃木希典切腹前日のことを尋ねた。その日、幼少の秩父宮、高松宮と共に乃木から「中朝事実」の講義を受けた昭和天皇は、乃木の様子に不審を感じたと司馬は書いていた。中曽根氏はその事実を確かめたくて、恐れ多くも直接天皇に尋ねたのだ。天皇の答えは「そんなこともあったかもしれないね」。中曽根氏は持参した「殉死」を置いて帰った。その後昭和天皇が「殉死」に目を通したかは定かでないが、日本近代史の1ページとして残したいエピソードだ。
ただこの本の終わりに近付き、「中曽根大宇宙教」などという独自の宗教観が登場してきたのには閉口した。

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2004.02.01

邱永漢著「楽天家でなければ生きられない」

処世訓エッセイ。
著者の失敗談が凄い。億単位の金を投資や事業で幾度と失っている。騙されたり裏切られたりもある。
著者の言う楽天家とは、「物事を希望的に観測する人」ではなく、「事態のきびしいことはそれなりに認識しても、人間の知恵は必ずそれを解決できるという信念を持つ人」である。
本書には難しい理屈も、奇抜な処世術もない。むしろ当たり前なことが書かれている。しかしその「当たり前」こそが強さと明るさの源のように読み取った。

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